内容説明
【2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位】
完璧な人生なんてないけれど、「これでいい」と思える今日はある。
ネットで人気を博し韓国で累計25万部(2023年9月26日現在)を突破した、心温まるベストセラー小説!
ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。
それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。
新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
396
2024本屋大賞翻訳小説部門第1位ということで読みました。本屋大賞らしい作品で良書ですが、これが本当に第1位かは疑問です。絶対的に投票数が少ないので、書店員さんたちには、もっと翻訳小説を読んで欲しいと思います。 ところで、書店のない街は、街ではないとのことですが、日本では書店のない街が増殖しています。約25年前、私は六本木の街で仕事をしていましたが、当時は書店が四店舗ありました。 しかしながら今は哀しいことに、0となっています。 https://lp.shueisha.co.jp/hyunam-dou/2024/06/08
青乃108号
357
俺は自己啓発本は一切読まない。いくらタイパ重視の時代だとは言え、手軽に人生の指南などを授かろうとは思わない。そこを踏まえてこの作品なんだけど、これは小説を装った自己啓発本だと感じた。金言めいた言葉は短い1章に1つ必ず披露され、続けて読むと相当しんどい。冒頭の理由により、残念ながら俺はこの本を好きになれなかった。その物語の持つ力で、読者に何らか1つの思いだとか発見だとかもたらせてくれて記憶に残るものこそが、良い小説だと思う。人によって感じ取るものは一緒でなくても、それは当然あり得る事で、だから面白いんだな。2025/03/17
tetsubun1000mg
249
TVの韓流ドラマが苦手なので、韓国の翻訳小説は避けていたのですが。 本屋大賞の翻訳小説部門第一位となれば外れは無いと選んでみる。 土地や名前が違うだけで日本の小説と変わりがない事に驚きました。 激情の国民性だと思っていたんですが、そんな人ばかりではないんですね。 仕事の成果のために心身の限界まで働いてしまう、正社員になる為に頑張っても果たせない、大学を出たのに就職できないなどの悩みに寄り添ってくれる店主。 ストーリーと登場人物の配役が非常に良い。 熊本市にあるカフェ併設で珈琲も楽しめる橙書店を思い出した。2024/07/11
tamami
167
韓国の本格的な小説を読むのは初めて。自分の世界が少し広がったような気がする。同じ店やさんを舞台にした小説でも、人物の心理描写など日本の小説のそれと微妙に違っている印象を受ける。それは作家の資質の違いなのか、それとも両国の社会あるいは人間関係のあり方の違いが反映されているのか。異文化体験という意味でも、貴重な読書となった。登場人物が皆善人で、話の展開がやや好都合に運ばれすぎと思わないでもないが、本屋を巡る人々の成長物語として心が洗われる思いがした。韓国の小説作品が何冊も紹介されていて、認識を改めさせられる。2024/06/03
フランソワーズ
157
次々と閉店する書店業界。でも「独立書店」というのが増えてきた。それは日本も同じ。ヒュナム洞書店を立ち上げたヨンジュ、店のカフェでコーヒーを出すバリスタのミンジョン。そのほかにも店に集う人たち。みな何かを目指していた末に挫けたり、失ったり。そんな人たちが”ちょっとした息抜き”に、今までの枠から自由になった本屋ヒュナム洞書店に通ううちに、自分自身を認めてあげたり、新しい自分を発見したりする。そんな温かい空気感が漂う作品で、登場人物だけでなく、読む者の心をほぐしてくれる。2023/11/05