内容説明
売春宿で殺されたサミット関係者の男。テロを警戒する政府はポーに捜査を命じる。ポーは3年前の強盗殺人事件との関連を疑い……
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
410
「おいおい、うそだろ」で次の章への引きを繰り返すのが妙に病みつきになるシリーズ四作目。複雑な構成でいながら、作を重ねるごとに読みやすくシャープになっていく文体のおかげで、退屈することなく読み進めることができた。文句なく楽しめる一冊ではあるのだが、個人的な趣味嗜好でいえば、戦争犯罪や、諜報機関が絡んで政治的な思惑が介入してくる事件よりも、前作『キュレーターの殺人』のようなものが好き。ティリーが有能すぎて、都合よく手がかりを見つけて物語の帳尻を合わせる役割になってきているのも、少し危うく感じる。2023/10/05
パトラッシュ
267
数々の難事件を担当してきたワシントン・ポーが、初めて国際政治絡みの殺人捜査を命じられた。英米両国の政治や情報関係者の思惑が交錯する渦中で有形無形の妨害が重なるが、どんな圧力にも絶対に屈したり腐らず突き進むポーの真骨頂が遺憾なく発揮される。本職の情報関係者を出し抜くティリーの大活躍に助けられ、正義のために行われたはずの戦争の裏に隠された汚い真実を暴いていく。これだけ大風呂敷を広げて大丈夫かと思えたのが次々と展開が二転三転していき、ラストでは警察小説とスパイ小説が見事に融合された鮮やかな収束ぶりを見せるのだ。2023/10/25
青乃108号
250
ワシントン・ポー4作目。威圧してくる分厚さにびびりながら読み始める。歴代ジェームズ・ボンド全員の面をそれぞれ着けた男達による貸し金庫破りと言う、伊坂幸太郎チックな場面から物語は始まる。それからと言うもの、物語はなかなかその真の姿を見せず、見えたと思えばそれはフェイクで、スケールは段々と壮大な物になってくる。裏切り、取り引き、そして思う、正義とは何か。4作目を読み終えて、面白かったなぁ、とコーヒーを飲みながら振り返っているのだけど、シリーズはまだまだ終わりそうもない。俺は果たして生きて完結を読めるのだろか。2024/02/29
seacalf
199
楽しみにしていたワシントン・ポーのシリーズ第四作目。今回も英国の美景カンブリア州からスケールの大きな話へと発展する。709ページもなんのその、瞬く間に読めてしまう期待を裏切らない面白さ。ティリーとの微笑ましいやり取りに加えてFBIのリー捜査官も加わり、海千山千のスパイであるMI5の面々にも一歩も引かず、丁々発止を繰り広げてくれる。ポーの出自に絡む事件の手掛かりにも近付き、今回は育休のフリン警部とポーと何やらありそうな病理学者エストルの活躍ももっと見たいし、ますます今後も見逃せない。2023/11/21
タツ フカガワ
192
売春宿で男の惨殺死体が発見される。男は近々開催予定のサミット会議で要人を搬送するヘリコプター会社の経営者兼操縦士だったことから、英国情報局MI5と連携してポーとブラッドショーが捜査に当たることに。冒頭から一気に物語へ引き込む語り口の上手さに加え、前作のキュレーター役を善玉としてポーが演じるような凝ったプロットとともに、今回もブラッドショーという少女のような分析官に癒やされる大満足のシリーズ4作目でした。ポーの実の父親探しが本編にいつ結実するのかも気になるところです。2024/01/05