岩波新書<br> アマゾン五〇〇年 - 植民と開発をめぐる相剋

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岩波新書
アマゾン五〇〇年 - 植民と開発をめぐる相剋

  • 著者名:丸山浩明
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  • 岩波書店(2023/09発売)
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  • ISBN:9784004319856

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内容説明

新大陸「発見」以降,世界中の人や物が頻繁に往来する結節点となってきたアマゾン.そこは,「人跡未踏の静謐な秘境」ではなく,欧米各国や日本など,各時代の列強の欲望が交錯し,激しい覇権争いが繰り広げられる開発のフロンティアであり続けてきた.そのグローバルな移植民の歴史を俯瞰し,従来のイメージを大きく覆す.

目次

はしがき
巻頭地図
序 章 アマゾンの「原初的風景」
1 多様な自然環境
アマゾンの領域と形成史
アマゾン水系の特徴
氾濫原と台地のコントラスト
2 先住民の生活世界
先住民の起源と人口
先コロンブス期の先住民社会
先住民の伝統的生活様式
第一章 ヨーロッパ人に「発見」されたアマゾン
1 西欧列強の進出と覇権争い――一六~一七世紀
アマゾンの「発見」
西欧列強の覇権争い
ポルトガルのアマゾン遠征
同君連合からの解放
2 ポルトガルの先住民政策――一六~一七世紀
カトリック修道会の進出
先住民奴隷化の抜け道
ヴィエイラ神父の奮闘
3 ポンバル侯爵の専制政治――一八世紀
ポンバルの統治戦略
イエズス会の追放
独占的貿易会社の設立
アマゾンの領土画定
4 王室のブラジル移転とアマゾンの混乱――一九世紀前半
王室移転と仏領ギアナ侵攻
ブラジル独立とカバナージェン
第二章 アメリカの進出と南欧移民の導入
1 アマゾン川の開放を迫るアメリカ――「明白な天命」の南進
モーリーの黒人植民論
モーリーの緻密な策略
アマゾン川の開放をめぐる攻防
2 南北戦争とアメリカ黒人の国外移転
リンカン政権と黒人植民論
南軍私掠船の暗躍
3 南部連合支持者たちの逃亡――ヘイスティングスの植民計画
理想郷となったブラジル
ヘイスティングスの野望
アマゾン移住の夢と現実
人種規範の違いが招いた挫折
4 南欧移民の導入
奴隷制廃止と南欧移民
ポルトガル人移民
スペイン人移民
イタリア人移民
第三章 ゴムブームの到来とイギリスの策動
1 第一次ゴムブームと旱魃難民
第一次ゴムブームの到来
セリンゲイロとなった旱魃難民
2 イギリスの策動――天然ゴム世界制覇への道
ウィッカムのアマゾン探検
アマゾン移住とゴム種子採集
ゴムブームの終焉
3 「悪魔の鉄道」建設と「アクレ紛争」
アマゾン川を目指したボリビア
鉄道建設の開始と中断
「アクレ紛争」の勃発
4 鉄道の開通と悲惨な運命
鉄道建設の再開
鉄道の完成とその代償
第四章 過熱する日米の覇権争い
1 アメリカのゴム戦略とフォード社の進出
ゴム戦略とヘンリー・フォード
「フォードランディア」の建設
ヘンリー・フォードの誤算
2 日本人のアマゾン進出――排日の「安全弁」
南アメリカに向かった日本人
アマゾンは排日の「安全弁」
3 パラ州におけるアカラ植民地の建設
コンセッションと福原調査団
「南米拓殖株式会社」とアカラ植民地
4 アマゾナス州におけるヴィラ・アマゾニアの建設
コンセッションと上塚調査団
「日本高等拓植学校」と高拓生
5 戦前の日本人植民地と移民の動向
戦前の日本人植民地
移民の定着・転出状況
6 排日・黄禍論に翻弄された日本人移民
満州事変と排日運動の再燃
狙われた上塚コンセッション
風刺画にみる排日とアメリカの影
第五章 第二次世界大戦とアマゾン――悲劇のゴム兵と日本人移民
1 アメリカのアマゾン介入――「ワシントン協定」とゴム戦略
軍事戦略と「リオ会議」
「ワシントン協定」
2 悲劇のゴム兵(rubber soldiers)
ゴム兵になった旱魃難民
ゴム兵の徴用と移住
ゴム兵の末路
3 戦中・戦後の日本人移民――敵性外国人の試練
植民地の瓦解と強制収容
戦後アマゾン移民の 末
終 章 アマゾンの「現代的風景」
1 アマゾン開発と環境破壊
軍事政権下のアマゾン開発
アマゾン政策の矛盾
止まらない森林破壊
2 追われる先住民――人権と環境を守る闘い
先住民法制とその限界
国勢調査が語る先住民
3 国際化の中のアマゾン
開発と環境保護の相剋
アマゾンの未来
あとがき
主要参考文献一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

73
タイトル通り本書はヨーロッパの進出以降のアマゾンの植民と開発の歴史を綴ったものだが、著者が地理学者であるため、冒頭のアマゾンの地理的特徴の記述がかなり詳細で、アマゾンという環境を理解するのに役立つ。また、植民・開発の主役もポルトガルだけでなく、スペイン、イギリスからアメリカ、そして日本と多岐にわたる。その中で新しい発見は、アメリカのリンカンが黒人奴隷の移住先にアマゾンも考えていたこと。同じ月に発売された岩波新書2冊で、このリンカンの人種主義的政策が奇しくも取り上げられたという偶然には驚いた。こちらも良書。2023/09/13

ゲオルギオ・ハーン

27
アマゾンと聞くとなぜか未開の密林で先住民族や危険な動物たちがいるという先入観持つが、本書を読むと実態との差にとても驚く。まずは開発の面だが、ポルトガル時代、南米の重要性(特に大量の天然ゴムが採れるのが魅力的だった)もあってすでに積極的に行っている。アメリカの参入やブラジルの独立でさらに投資は増えるが、一方でアマゾンの熱帯環境に機械的に投入される数多くの労働者たちが犠牲となる。日本の開発参入の歴史が書かれており、戦前の現地と本国の温度差や煮え切らない本国に神経をすり減らす公使の様子は気の毒に思える。2023/12/08

21
500年に渡るポルトガルスペイン米英日、そして本国ブラジルによるアマゾン開発史。風土病や自然環境、現地のゴム栽培の知識を顧みず植民地化に失敗するアメリカ。ゴムの種子7万粒を極秘で本国に持ち帰り、勝手知ったるマレー半島でゴムプランテーションを成功させ、ブラジルのゴム栽培を逼迫させる英。きたないさすがえげれすきたない。…つうか東南アジアのゴムってブラジルからもたらされたものだって知らなかった。アマゾンが満州化することを怖れるブラジル。政治情勢の移り変わりによっていともたやすく棄てられる移民たち。どんより。2023/12/23

さとうしん

17
物語ブラジルの歴史+天然ゴムの世界史+日米アマゾン植民史といった趣の本。現地の自然環境や文化に適応しようとせず、植民に失敗するアメリカ人の姿、「ゴム兵」を含む移民たちを「棄民」同然にした日本やブラジル政府の対応、現地での排日に科学を持ち出す態度は現在の日本、アメリカ、ブラジルのありようも示唆するだろう。戦中の日本の植民にブラジルが当時進行していた満洲事変を持ち出して警戒したというのもごく自然な発想で当たり前だろう。2023/08/27

ktf-tk

5
授業の参考資料として購入していた本。ブラジルを中心としたアマゾンの地域は主にポルトガルによる植民地の印象が強かったが、アメリカの介入がとても色濃いものだと感じられた。先住民を授業の中でどのように扱うかももっと考えいないといけなかった。移植者、先住民、開発、環境など含めた授業構成の再検討の材料になった。2024/02/20

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