内容説明
「さて、エディ。こう呼ばれたいなって思う名前はあるの?」
「アシュリー」
本当はそんな名前、考えたこともなかった。〈自分は男じゃないらしい〉という認識は、〈どうも女性のようだ〉とは直結していなかったからだ。それなのに訊かれたら口をついて出た。アシュリーは子どもの頃に可愛がって大切にしていたぬいぐるみだ。
(「エディ、あるいはアシュリー」より)
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性の多様性。移民。失われた日々。喪失。再生。暴力……。
どこにでもあるリアルな世界を、時を越え、現実と幻想とを自由に行き来しながら、未来と希望を信じて描いた短編集。
ジェンダー・アイデンティティの不確かさを自らに問いかける表題作「エディ、あるいはアシュリー」、第63回現代文学賞受賞作「相続」など8作品を収録。
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避けようのない過酷な現実と、その先にある柔らかな希望……。
韓国ファンタジー界の旗手が織りなす物語のタペストリー8編。
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【目次】
■レオニー
■エディ、あるいはアシュリー
■海馬と扁桃体
■正常人
■木の追撃者 ドン・サパテロの冒険
■へその唇、 みつく歯
■相続
■メイゼル
■あとがき
■訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
14
様々なジャンルの作品が入っていました。2023/09/24
Jessica
3
リベラルなファンタジー短編集と言ったところでしょうか。旅行時機内に持ち込んで読み終えました。 表題作よりも『百年の孤独』のような要素のある、5年に一度集うフィリピン人家族のストーリーが印象的でした。なんというか、ストーリー展開が全て独特なんですよね。 それぞれの話に個性がありすぎてなかなかまとめるのが難しい本作、所謂現在韓国の一部の世相といった感じで好きな方は好きだと思います。2024/09/04
一柳すず子
3
5年に一度集う一族、性の不確かなアイデンティティ、人生に深く関わる出会い、何者にもなれなかった私たち、愛のマジックリアリズム、抑圧と解放、シスターフッド的な何か、おとぎ話の主役は自分なのだ。2023/10/08
今日もおひさま
2
童話パッチワークからSFの鮮明さまで 『エディ、あるいはアシュリー』キム・ソンジュン 舞台も散り散りな八編を収録した短篇集。 現代文学賞を受賞した『相続』(〜2018)は面白く読んで、『メイゼル』(〜2019)は、著者を読むきっかけ『未来は長く続く』(〜2020)は、SFの設定を上手くつなぎ合わせたパッチ―ク生の中に鮮烈さと創作的なバランス感覚が良かったのを思いだす。今回は童話とファンタジー性のそれを見せれくれた。 以下ブログ https://todayisalso-stroll.com/?p=46572024/11/26
endlessdiscover
1
ダイバーシティ的なファンタジー短編集ということで良いのかしら。空想、虚構と現実、過去と現在、未来の入り混じった、空間を超えた感覚で読むことができた。訳者あとがきで簡単に内容が要約されており、あぁこういうことかと思った。もう一度読めたら読もう。2024/07/28