内容説明
鉄道から近代日本を眺める
近畿日本鉄道は都市間連絡や参詣、観光、信者輸送などさまざまな性格をもつ路線を抱え、約500キロの路線網を誇る大私鉄である。生駒トンネル建設で起きた事故、近鉄最大のターミナル・大阪阿部野橋駅の経緯などを振り返るとともに、吉野を目指し、また伊勢神宮への延伸を実現していった歴史を繙いていく。
南海電気鉄道は現存する日本最古の私鉄である。大阪南部から和歌山にかけての良質な木材はよく知られていたが、海路での運搬方法は気象状況に左右されやすく、また高野山を目指す多くの参詣者や観光客のためにも鉄道敷設が強く求められた。
南海の競合線JR阪和線は当初、阪和電気鉄道という私鉄で、その運転速度は戦前定期列車の国内スピード記録をもつ。これに対して、南海は昭和11年に「わが国で初めて冷房電車運転」を行なう。冷房車が大手私鉄の通勤列車に本格的に浸透するのは昭和50年代以降である。
昭和12年、日中戦争が始まると、贅沢な冷房は停止を余儀なくされる。私鉄の歴史は近代日本の歩みそのものとも言える。鉄道会社職員や沿線住民の声と当時の地図から「鉄道王国」日本の姿を浮かび上がらせていく。カラー地図多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
14
近鉄編では奈良ー上本町間から始まり、伊勢電鉄買収後の名古屋進出に至るまでが取り上げられている。「伊勢へ、名古屋へ」小私鉄買収と改軌を繰り返し、企業の拡大に務める営為は歴史史料から見る『東への鉄路』の裏面史と言えよう。南海編では、日本最古級の現存する鉄道会社が、度重なる国家買収の危機から会社の独立を「南海山手線(現:JR阪和線)の犠牲」を払って守った。近鉄京都線や南海和歌山市内線等、取り上げられていない部分もあるが、いずれ、このような形で一書に纏めてもらいたいものである。戦後編は難しいのかな?2021/04/27
やまほら
3
関西編は2巻で完結。1巻でも書いたかもしれないが、関西編はほとんどが路線の形成過程で、関東編ほどの広がりがないような気がする。それでも興味深い内容に満ちているのではあるが。車輛の話はほぼない中で、南海の冷房試験の結果はおもしろい。あと、文字等細かく考察されているが、誤字らしきものが数か所あったのはちょっとね。2019/04/14
おおい
2
ためになる、鉄道フアンには。2019/08/27




