内容説明
日本の近代史がくっきりと浮かび上がる
温泉に浸かってゆっくりしたい。人々のそんな思いを後押しし、それぞれの土地の名湯が楽しめるようになったのは全国の鉄道路線がもたらしてくれた恩恵である。本書で取り上げる富山地方鉄道、北陸鉄道、箱根登山鉄道の開業は、宇奈月温泉、山中温泉、箱根温泉などの温泉地をより身近なものにした。富山県内各地に路線を拡げていたいくつかの私鉄と富山県営鉄道、富山市電を引き継いだ富山地方鉄道(富山電気鉄道)、石川県内の私鉄路線を統合した北陸鉄道、小田原馬車鉄道から小田原電気鉄道となり、箱根湯本・強羅間を延長した箱根登山鉄道。 この鉄道会社3社の敷設免許申請がどのような経緯で認可され、いかにして沿線住民の通勤通学の足となり、観光客の利便性に応えてきたのか。 一方で、車の所有台数は1960年に290万台、70年には1653万台、2010年には7869万台となる。このように移動手段が劇的に変化するモータリゼーション隆盛のなかで、輸送力やスピードアップ、国際観光やリゾート開発など、さまざまな課題に直面する鉄道の歩みを数多くの当時の地図や資料、公文書で辿っていく。カラー図版多数掲載。[4色刷]
感想・レビュー
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箱根登山鉄道には一度乗りたいと思っていたので手に取ったが、思いがけず富山地方鉄道や北陸鉄道の話しも面白かった。▼明治維新後、全国各地で地元資本による鉄道の建設が競うように進み、地域の人々や物資の輸送を支えた話はどれも、なるほどと感心したくなる郷土史であり、近代史に思えた。列強国に負けまいと取り組んだ殖産興業、それを支える電源開発のために敷設された黒部川沿いの峡谷鉄道。のはずが思惑が外れて観光列車で当初出発するなど、色々な経緯を当時の路線図や地域図などを使って教えてくれる本。難点は多数掲載されている⇒2024/02/21