内容説明
教科書や小説に描かれる戦国時代の合戦は疑ってかかるべし。信長の鉄砲三段撃ち(長篠の戦い)、家康の問鉄砲(関ヶ原の戦い)などは後世の捏造だ! 戦国時代を象徴する六つの戦いについて、最新の研究結果を紹介し、その実態に迫る!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
119
気鋭の日本史研究家による、戦国合戦を最新の研究で振り返った一冊。「川中島合戦」から「大坂の陣」、終章に「豊臣秀吉の天下統一過程」の通説を批判したもの。とりあえず井沢克彦氏の「川中島合戦、一騎打ちはあった説」に対して批判を行っている。コレがなければ呉座先生の本じゃないような気がするのは六点だけではないだろう。また、日本人の歴史観製造に大きな力を持った徳富蘇峰が批判されている。「私たちが学ぶべきなのは、(中略)日々の地道な粘り強い努力という実像である」という結びの言葉の重さをしみじみ感じる。2023/09/19
skunk_c
70
戦国時代の戦乱について、戦前に確立された「通説」を、近年の研究成果からくつがえしていく。どちらかというと研究動向を紹介する趣で、自身が一次史料に当たって論を組んだわけではない。もちろん検証に当たって一次史料は参照しただろうが、著者独自の歴史を展開しているわけではないので、サクッとは読めたが、その分ちょっと物足りないものを感じた。例えば長篠の三段撃ちは虚構だという話は、かなり前からほぼ定説化していると思える。そんな中、最後の惣無事の解釈は面白かった。この辺の読み解きはさすがこの著者と思わせるものがあった。2023/10/01
内藤銀ねず
26
呉座さんの本の中では歯応えが少なかった。扱っているのは「第四次川中島(信玄謙信一騎打ち)」「桶狭間(迂回奇襲)」「三方ヶ原(信玄の上洛)」「長篠(三段撃ち)」「関ヶ原(問鉄炮)」など、近年の研究で覆されてきた事例。戦国時代の新発見がネットニュースに出たりすると、歴史ファンから長大なコメントが寄せられるのを見たことがある。そういう人たち向けに「歴史学界ではこうなっていますよ」を明確に示す呉座さんの姿勢は一貫している。でも、あの毀誉褒貶凄まじかった『応仁の乱』のような「これ書かなきゃ死ねない」的なの読みたい。2023/10/10
軍縮地球市民shinshin
24
川中島の戦い、桶狭間の戦い、三方ヶ原の戦い、長篠の戦い、関ヶ原の戦い、大坂の陣、藤木久志「惣無事令」批判など。桶狭間の戦い(1560年)では、今川義元が天下を取るために上洛、信長の迂回奇襲戦法は現在では史実ではないとされている、長篠の戦い(1575年)の武田騎馬隊の突撃、鉄砲の三段撃ちは史実ではない、関ヶ原の戦い(1600年)では家康が小早川秀秋に撃ちかけた「問鉄砲」は史実ではない、などの研究史を辿りながら最新の研究情報を紹介している。最後の藤木久志の「惣無事令」は豊臣平和令ではないという研究史の整理は一2023/11/26
nishiyan
19
「川中島の戦い」、「桶狭間の戦い」、「三方ヶ原の戦い」、「長篠の戦い」、「関ヶ原の戦い」、「大坂の陣」と戦国期から徳川期にかけての著名な合戦を通説を確認した上で、最新の研究成果を元に、その実像を詳らかにする新書。学説を紹介してはまとめるスタンスであるからか、著者特有の毒っ気は薄く感じた。まあ某作家への批判があったのはいつも通りという感じではあるが。興味深かったのは「大坂の陣」を扱った章。方広寺鐘銘事件や「冬の陣」の戦後処理を巡るごたごたの解釈は腑に落ちた。また「夏の陣」があのような野戦になったのも頷けた。2023/10/13
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