内容説明
中国史上最初の皇帝となった秦の始皇帝。東方六国を平定し、天下統一を成し遂げた彼の覇業を支えたのは、数々の書物であった。 始皇帝は各種の書物とどのように出会い、どのように読んでいたのか。当時の書物の読み方を丹念に分析していくことで、彼が生涯のどの時期にどんなかたちで書物から影響を受けて政治を行ったのかが見えてくる。秦王即位の時期には帝王学を学び、六国との戦時には戦略を学び、統一後は統治を学び、そして、晩年は不老不死へ思いを馳せるに至る。現代の私たちも年齢に応じて読書傾向が変わるように、始皇帝自身もその生涯のそれぞれの時期に応じて必要とした書物のジャンルが変わっていった。 生涯を通して様々な書物から考えを取り入れて政治を行った聡明な帝王だった始皇帝だが、なぜ最晩年に焚書坑儒という事件を起こすに至ったのか。書物を通して、新たな視点で人間始皇帝の人生を見つめ直す。*電子書籍化にあたり、許諾等の理由から、紙本に含まれていた一部の写真は掲載しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
18
実際に読んだとされている『韓非子』の諸篇や、始皇帝のために書かれたとも言われる『呂氏春秋』など以外に、臣下の上奏文、臣下が編纂した『蒼頡篇』、当時の人が読んでいた睡虎地秦簡『為吏之道』、はたまた事前に文章をチェックしたはずの刻石の文章、晩年に読んだのではないかと著者が言う『老子』など、幅広い書が挙げられている。その他焚書坑儒など関連の話題に対する考察も盛り込まれている。いささか主旨から外れているのではないかと思う部分もあるが、紙幅の割には充実した内容となっている。2023/03/30