内容説明
「東が上」の京都市街地図/鳥瞰図絵師・吉田初三郎/アイヌ語地名の宝庫/職人技のトーマス・クック時刻表/非常事態の地図……著者は小学校の先生が授業に持参してきてくれた国土地理院の一枚の地形図に魅せられて以降、半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた。その“お宝”から約100図版を厳選。ある時は超絶技巧に感嘆し、またある時はコレクターの熱意に共感する。身近な学校「地図帳」やグーグルマップを深読みするなど、「等高線が読めない」入門者も知って楽しい、めくるめく世界。
はじめに――地図はみんなのもの
1章 余はいかにして「地図バカ」となりしか
2章 地図を愛した先人たち
3章 お宝地図コレクション
4章 西へ東へ、いざ机上旅行
5章 地名・駅名・バス停名あれこれ
6章 地図に刻まれた栄枯盛衰
7章 天災と人災
おわりに――紙の地図がなくなったら
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
135
著者の地図バカぶりは『釣りバカ日誌』の浜チャンに優るとも劣らない。残念ながらマンガの主人公にはなれそうにないが、好きで好きでたまらぬジャンルを奥義まで極めてしまう人をバカと呼ぶのは勲章でもある。そんな自他ともに認める地図バカが地図を愛するようになった経緯を回想し、秘蔵の名図珍図を入手するまでの苦労を語るのだから、地図マニアには自分のことを読んでいるような気分だ。この人が地理教師だったら、自分も同じ沼に引き込まれていただろう。グーグルマップを即座に見られる今日だが、先人たちの積み重ねに改めて感動してしまう。2023/11/11
KAZOO
102
題名からして地図に魅入られた人が書いたということがよくわかります。私も地図は眺めているだけで好きなのですが、よくまあ日本の地図ばかりではなく海外のものを探したり昔の鉄道地図なども探されています。特に今まで知らなかったのですが、山手線の周りをまわる「東京山手急行電鉄」という幻の鉄道構想があったのは驚きです。東京駅から千住、板橋、中野、大井町とぐるっと回っています。また小田急電鉄の昔の名前が今とはかなり異なっていることもよくわかりました。2024/02/02
まーくん
99
自分も授業中、先生の話もうわの空で地図帳を眺めていた口なので、著者の気持ちは良くわかりますが、著者のように奥義を窮めるまでにならなかったのは、やはり凡人の限界でした。古書店で手に入れた旧制中学校(浦和中学)の世界地図帳に書かれた氏名に、終戦時には29歳に、もし戦地に赴かれたなら無事帰られたろうかと、その方の人生を思いやっていたのが印象に残ります。グーグル・マップの世の中になりましたが、先人の地図製作にかけた努力に敬意を表したくなるエピソード満載です。著者の地図への思い入れにも改めて敬意を。2023/11/14
たまきら
46
蒐集まではしてませんが、かなりの地図好きです。昔仕事で鍛えられ(殴られたりもしましたよ…)たおかげで、地図の読み方がわかるようになり、それがさらに地図の面白さを教えてくれた気がします。どこかに旅に行くときは白地図を大きくコピーしてスケッチブックに貼り、色をつけたり余白に絵を描いて楽しんだものです。著者の「机上旅行」という言葉、気に入りました。友人はGoogleEarthで旅するのを楽しんでいるそうですが、私は紙派かな。著者が方向音痴だと書いてあって笑っちゃいました、あはは。2024/07/29
どぶねずみ
42
地図に対するマニアックな愛に満ち溢れた本だ。読んで改めて感じたことだが、地図って何にでも機転が利くツールなんだなぁ。私自身が子どもの頃にしていた一人遊びの一つは地図を見ることだったから(なんてネクラ!)、著者の地図愛がとてもよく伝わる。地形を確認するのはもちろんだが、鉄道が敷かれたり、商業施設ができれば、そこに人が集まり、町ができていく。過去を知ることができれば、未来予想もできる。マニアックすぎて賛否あるかもしれないけど、私にはとても共感できることがたくさんあった。2023/12/18