内容説明
百貨店の催事で古書展覧会が行なわれるようになった昭和42年春。詩集のコレクターである大沢から、古書収集の極意は「殺意」と聞かされた喜多は、彼が本を借りてはそのまま私物化しているという噂を耳にする。その後大沢が居合わせた展覧会で、稀覯書が忽然と消え失せた……本を手に入れるためなら手段は選ばない収集家の闇を描く「展覧会の客」、古書オークション開催者に翻弄される喜多が最後に意外な真相に辿り着く「『憂鬱な愛人』事件」、古書店で起きた盗難事件と、図書館での司書強殺。「電網恢々事件」の三編を収録する。/【目次】第一話 展覧会の客/第二話 『憂鬱な愛人』事件/第三話 電網恢々事件/あとがき/文庫版刊行にあたって/解説=北原尚彦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
18
紀田順一郎さんの過去作、古本を巡る推理を繰り広げるシリーズの今回創元推理文庫より復刻された連作集です。こちらは古本探偵とは、登場人物が異なり、探偵役は、本人紀田をもじった喜多さんが主人公。登場人物に前回読んだ、古本探偵に出てきた人物と同じ古本哲学をもつ変わり者が違う名前で登場します。ここがこのお話の面白い所で、フィクションではあるが、実際に紀田さんが見聞きした実在する人物に肉付けして作った業の強い古本の虫達であながち完全な虚構ではないそうでそこに説得力があります。パソコン黎明期の『電網恢々事件』等。2023/12/15
Urmnaf
13
ぱっと見、少年探偵団風のタイトル。しかしてその実体は、古書集めに精を出す本好きな人々。これがまた奇矯な振る舞いの人たちばかりで、まさに「怪人」たち。そこで起きる三つの事件話。先の二つは盗難・消失(不可能興味あり)で、ある意味、微笑ましいところもあるが、三つ目は死人も出て洒落にならない感じ。古書界が舞台でも、古書より古書愛好家に主眼があり、ビブリオ的興味は薄め。その分、事件は普通にガチミステリ。閑話的に触れられた図書館論議は多くの本読みが同意しそう。2023/11/23
歩月るな
9
こちらの連作の主役・語り手は文筆家の喜多さん。最近キタさんよく見るな。これは紀田さんのもじりではあろうけれども。古書がらみのもろもろな事件が巻き起こる。窃盗うんぬんにしても、本は嵩張る。そして金がらみになりがちで、世知辛くも苦々しい事件が起こる。まあ言ってしまえば、研究者たちならもっとあれなんだけど、研究費を学校がもってくれるかどうかって話になってくると、後ろ暗い事もきな臭い事もかかわってくるから、事件の種になりやすくもある。言うほど古びれもしない内容が、世紀末の空気を感じられる名短編集となっているよし。2023/12/18
花嵐
3
★★★☆☆ 初読み作家さん。「神保町」と「古書」という切っても切れない二つがメインとなって展開される。と言ってもタイトルにある「怪人」要素はそこまで強くは感じられなかったかな。古書にまつわる事件が三つ起こるわけだが、最初の「展覧会の客」が一番面白かった。その時代のその場所だからこそ起こりえた事件だったので、現代の自分からしてみれば異世界にも近い隔絶があるからこそ面白いと思えたのだろう。2024/02/28
ゆびわ
3
自分の古書ミステリーブームに乗って購入。 20年前の本だからか、文章が硬く感じられて、読むのに時間がかかったかな笑 古書を扱ったがっつりミステリーで楽しく読めました。 憂鬱な愛人、読んでみたいです。高野にイライラしまくってたけど、最後には手に入れられてよかったなあとホッとしました。インターネットとかも扱ったミステリーで興味深く読めました。 紀田順一郎先生の本他にも買ったので、読むのが楽しみです。2023/11/13
-
- 電子書籍
- ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この…
-
- 電子書籍
- 刑事の灯 双葉文庫