内容説明
大地震から一年後、東京・湾岸エリアにはカジノと少女サーカスが誕生。その開発時、正徳会グループの建設現場で責任者が自殺した。それは女子学生・マリナの父で、彼女はその謎を探るうち、少女サーカスの団員募集を知る。真相を知るためこの街で生きると決意し、空中ブランコ乗りを志す中、権力者――生徳会代表・鷲塚と出会い……。裏で蠢くカネと欲望、喝采と熱烈なファンレターに、”嘘”で立ち向かう少女の熱狂青春ミステリ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
32
首都・東京を襲った大地震から一年後、経済特区・湾岸カジノに街を象徴する少女サーカスが誕生。父の自殺で天涯孤独になったマリナが自殺の真相を探るうち、少女サーカスの団員募集を知る前日譚。空中ブランコ乗りを目指す中で、彩湖と杏音というかけがえのない仲間や、特区で多大な権力を持ちながらサーカスに反対する『生徳会』代表・鷲塚と出会と出会うマリナ。反対派のデモ、裏で動く莫大な金、喝采と観客からの熱烈なファンレターといった熱狂に翻弄されながら、大切なものを見失わなかったことで紡がれた未来を感じさせてくれた物語でしたね。2023/09/05
yosa
21
これは絶対紙の本でと信じてweb連載は我慢して、取っておいた物語をいよいよ読んでしまいました。あのとっておきの物語の続きが読めると思ってたのに前日譚でしたがそれはそれ。これは紛れもなく大好きな紅玉いづきさんの本でした。光の幕では少女たちの進む勇気が描かれていたとすれば、影の幕は覚悟の物語。だからかこっちの少女たちは脆さよりも強さが目立つ。でもそれがいいんだ。物語はミステリ的な構造を軸としているのですが、少女たちの輝きの方が強くてせっかくの仕掛けが功を成しておらず、全体の印象がぼやけてしまうことだけが残念。2023/12/09
遙
18
少女サーカスが完成されるまで、初代団員の少女達の多くの苦労や葛藤のドラマ。脈々と熱く紡がられる文面から目が離せませんでした。 ブランコ乗り、パントマイム、歌姫、それは彼女達にとって、生きると言うこと。 裏で蠢く大人達の思惑や、解き明かされる真実といったミステリー要素もあり サーカスというファンタジックながら、突きつけられる人間臭さと現実。 不穏で泥臭く、それでも美しいこの世界。 二部作の過去と未来、よく出来た構成でした。 とても面白かったです。2024/01/07
椎名
15
「光の幕をあげる」の対となるような一冊。どちらから読んでもいいとは思うが、やはり光から読むほうが楽しめる気がする。初代サーカスの幕が上がり、その初代ブランコ乗りがブランコから降りるまでが描かれる。永遠というたった一つの本物を求め、喝采を浴びる一瞬に取り憑かれサーカスという美の狂乱に身を投じていく。そんな少女たちの姿をこれでもかと描写した後だからこそ、それが如何にまともではないか、降りた先にも幸福があることをわ気づかせるシーンには身悶えてしまう。どうかこの少女たちが幸せになりますように。2024/05/01
イシカミハサミ
13
原題「ブランコ乗りのサン=テグジュペリ」 の、前日譚。 分冊になっているけれど、時系列としてはこちらが先。 少女サーカス創成の物語。 光のほうから読んだけれど、 ストーリー的な繋がりはそれほどなく、問題はなかった。 紅玉さんの作品としては、 固有名詞が多かったり欲望が渦巻いていたりと、 珍しい部類の作品に分類されるかも。2023/12/11