内容説明
遺伝とはくじ引きのようなもの――だが、生まれつきの違いを最先端の遺伝統計学で武器に換えれば、人生は変えられる。〈遺伝と学歴〉〈双子〉の研究をしてきた気鋭の米研究者が、科学と社会をビッグデータでつなぎ「新しい平等」を指向する、全米で話題の書。サイエンス翻訳の名手、青木薫さんも絶賛する、時代を変える一冊だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
読特
48
三代遡れば8人分。我々は先祖代々受け継がれるものをランダムに配置されてきた。人は生まれながらにして違う。それを認めなければ格差はなくならない。得手不得手は遺伝子が決める。機会均等にしても結果には運が左右する。何が優位かは時代で変化する。バリエーションの多さは種の存続のため。更に、自由主義経済では消費が生産を促す。富の独占では生まれる価値に偏りが出る。優勢思想は今この時代をも衰退させる。苦手なことは補完されて、得意なことは活かされる。出来も不出来も受け入れて、素の姿を尊重する。そんな社会を目指していきたい。2024/08/13
りょうみや
32
まずは遺伝の科学的、統計的解説が分かりやすく詳しい。今の教育学や社会学は遺伝差をないことにして環境の差のみで違いを議論するものが多い。心の平等な社会を築くためには人間のあらゆる行動原理や能力に遺伝の影響が大きいことをまずは皆が認識する必要があるとしている。そのうえで優生学的な思考にはまることなく、分類や排除のためではなく機会改善のために遺伝情報を使うことを提案している。正直とても難しい綱渡りのように思えるが著者の言う道しかない。2023/12/14
tom
24
著者が言いたいことは、要するに、人の運命は「運」だということ。大金持ちであれ、社会的地位であれ、人とうまく付き合える、顔の良し悪し、身体能力、本を読める・・。これは「運」がよかったということ。その根っこには遺伝子がある。遺伝子がどんなふうに「運」を招き寄せてるかは、今の科学では十分解き明かせてない。でも、単に「運」が良かっただけのことだからエラそうにしてはいけない。「運」が良かったことを感謝すべきだと書いている(と思う)。この単純なことを説明するために400頁が必要ということが人の世の面倒さなのだと思う。2024/01/20
かも
11
★★★★☆生まれによる差異(遺伝子的な差異と社会的な差異)の扱いについての新しい視点を唱える。これまでは優生学とゲノムブラインドの2つの観点がメインだった。つまり「遺伝的な差異により生まれながらに価値ある人はより多くを得る権利がある(優生学)」または「遺伝的な影響を無視してすべての人を平等に扱う(ゲノムブラインド)」という観点。著者はこの中間としてアンチ優生学「遺伝的な差異は運の一種だと認めて、恵まれた人が恵まれない人を助ける(底辺を底上げする)公平な社会を構築するべき」というスタンスをとる。2024/09/07
まろにしも
11
アウトカム(年収、学歴、能力、性質、幸福感など)は、ポリジェニックスコア(遺伝子の組み合わせ)によって「ある程度」、予測可能であるというのは、刺激的ではあるけれど「何となく分かる」というのが実感。この「ある程度」というのがミソで確定的ではないが影響度が大きい(身長のようなもの)。だからこそ、このスコアを知ることで問題を回避できる余地があるし、適切なサポートも可能となる。闇雲に遺伝子スコアと優生学を紐づけてフタをするというのではなく、格差を縮小するための武器と位置付けるという考えには共感出来る。2023/11/18
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