内容説明
「あたしって虐待されてるの?」
アリバイトリックに新境地!あなたは絶対に見破れない。
椎名きさらは小学五年生。母子家庭で窮乏している上に
親から〈水責めの刑〉で厳しく躾けられていた。
ある時、保健室の遊馬先生や転校生の翔太らに指摘され、
自分が虐待されているのではないかと気づき始める……。
一方、JR川崎駅近くの路上で、大手風俗店のオーナー・遠山が
刺し殺された。県警本部捜査一課の真壁は所轄の捜査員・宝生と組んで
聞き込みに当たり、かつて遠山の店で働いていた椎名綺羅に疑念を抱く。だが事件当夜、彼女は娘のきさらと一緒に自宅にいたという
アリバイがあった。真壁は生活安全課に所属しながら数々の事件を
解決に導いた女性捜査員・仲田蛍の力を借りて、椎名母娘の実像に迫る。
前作『希望が死んだ夜に』の「こどもの貧困」に続き、
「こどもの虐待」をテーマに〈仲田・真壁コンビ〉の活躍を描く
社会派と本格が融合した傑作ミステリー。
芦沢央 推薦!
「構造的であるからこそ、そこにおさまらないものが浮かび上がる
衝撃の先にあるものを描こうとしている小説だと思った」
※この電子書籍は2020年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
143
シリーズ第2作のテーマは貧困と虐待の連鎖。貧しい家庭で親に愛されず育った子はそれが愛情と思い込み、自分が親になっても同じ行動をとってしまう。必死に抜け出そうとあがいても成功する者はわずかで、却って惨めな状況に転落するばかりだ。そんな犯罪に巻き込まれた少女を救おうと奔走する仲田蛍と真壁だが、さらに救いのない真実が明るみになってしまう。自己責任という言葉で安易に片付けるのは、不快なものを見たくない者の傲慢でしかない。「追い詰められたら誰でも似たようなことをしてしまう」ほど、人は弱い存在なのだと思い知らされる。2024/02/17
itica
64
シリーズ2。「希望が死んだ夜に」で登場した真壁、仲田捜査コンビ再び。殺人事件の容疑者としてある女が浮かび上がるが、娘の証言でアリバイが成立。しかしその娘は母親に虐待されている疑いが持たれる。果たして娘の証言は真実なのか。貧困母子家庭、虐待そして殺人と滅入るような暗い話だ。終盤に事実が明らかになると、最初はすんなり呑み込めなかった。何がどうして、こうなった?と頭の中は混乱状態だ。これは見抜けと言う方が無理だろう。気になるストーリーだが、余りにややこしいのは苦手。 2024/11/13
坂城 弥生
44
読み終わってからタイトルを見るとより切ない、、2024/01/08
よっち
32
母子家庭で育って、母親からの虐待を躾だと信じていた小学五年生の椎名きさら。一方、風俗店オーナーの刺殺事件を捜査する神奈川県警の真壁がきさらの母親の容疑を疑うようになってゆくミステリ。自らが傷ついても懸命に母親をかばい続けていたきさら。殺人の容疑者として警察に疑われるものの、娘と一緒にいたというアリバイを崩せない行き詰まった状況で、少年事件に関わる仲田に協力を依頼する真壁。きさらが状況を自覚して追い詰められてゆく中で、明かされてゆく構図にはやられたと思いましたが、同時にやりきれなさも感じてしまう結末でした。2023/09/27
おうつき
24
本格ミステリとしても、児童虐待というセンシティブな問題を扱った小説としても、題材に真摯に向き合っているのが伝わってきた。途中の描写は読んでいて辛かったが、現実にはこれ以上に酷いことが起きているのだと思うと、胸が張り裂けそうになる。ミステリの核となる仕掛けには途中で気づいてしまったが、それ以上の驚きがその後に待ち受けていて驚かされた。2024/06/18