内容説明
「ぴったりくる隙間」を追い求める広美は、ひとりの男に目を奪われた。あの男に抱きしめられたなら、どんなに気持ちいいだろう。広美の執着は加速し、男の人生を蝕んでいく――(「素敵な圧迫」)。
交番巡査のモルオは落書き事件の対応に迫られていた。誰が何の目的で、商店街のあちこちに「V」の文字を残したのか。落書きをきっかけに、コロナで閉塞した町の人々が熱に浮かされはじめる――(「Vに捧げる行進」)。
ほか全6編を収録。
物語に翻弄される快感。胸を貫くカタルシス。
文学性を併せ持つ、珠玉のミステリ短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
287
呉 勝浩は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。バラエティーに富んだ魅力的な短編集、オススメは、表題作『素敵な圧迫』&『論リー・チャップリン』です。 https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322303000843/2023/09/15
イアン
172
★★★★★★☆☆☆☆タイトルが印象的な呉勝浩の短編集。幼い頃から圧迫されることに快感を覚える広美。別れ話が拗れ、極限の状況に追い込まれた彼女が見つけた理想の圧迫とは…(「表題作」)。時代背景は昭和の高度成長期から令和のコロナ禍まで、ジャンルも犯罪小説・SF・コメディと多岐にわたる。強いて共通点を挙げるとすれば「歪み」と「狂気」か。表題作や「ミリオンダラー・レイン」では、冒頭の不穏さを念頭に読者は読み進めるのだが、ここに仕掛けられた捻りが渋い。万人受けする作品ではないが、王道作品にはない芳醇さを秘めている。2024/10/29
hiace9000
154
6短編それぞれに味わいは異なるものの、小川哲さんの『嘘と正典』を読んだときのような、えもいわれぬ不思議さと、穏やかではない不気味さを感じるのはなんだろう。足元から滲みだしてくる仄暗い狂気や、何処かが日常とはズレた違和感は、決して心地よいとは言えないが、突き落とされる闇を味わうイヤミスでもない。これはそうー、もしや「圧迫」感ではないか。書名の"素敵な"ではない方のそれに近い。様々なシチュエーションを現出させ、登場人物に憑依して読み手を作品世界でじわじわと締めつけてくる文学「圧」には、降参するしかないだろう。2023/10/09
hirokun
134
★2 本の帯には、超弩級のミステリ短編集とあるが、私の感性に柔軟性がないためか作品を楽しむことは出来なかった。同じく本の帯に、物語に翻弄される快感とあるが、これまた残ったのは不快感のみ。自分の頭の固さ、物事をつい枠に嵌めて考えてしまう思考癖など読書を通じて変えていきたい部分であるのだが、現実は極めて難しい。ほかの読者の方々の書評を読み、少しでも頭を柔軟にして読解力を高めたいと思った一日であった。2023/10/03
ケイ
117
このミスで話題だった「爆弾」がとてもよかったので、新作も手に取った。短編集だと雰囲気がガラリとかわる。緊迫感や手にあせ握る感じの代わりにザラりと触れてくるように思った。「素敵な圧迫」は、閉所恐怖症の私にはその状況を想像しただけて息が詰まった……とならず。誰かの身体が与える圧迫感が想像できず。だからこだわる理由も難しい。どれも一昔前の設定のように思えたのは、男女の関係や仕事の仕方のプロトコルが今ではないからかな。次はまた長編を読んで見ようと思う。2024/02/08