内容説明
味や香りで食事を楽しみ、口元を見て声を聞くことで会話するといったように、私たちが経験する日常的な出来事の多くは、複数の感覚の情報を解釈することで成立している。感覚モダリティに共通する融合てがかりの存在を明らかにし、行動実験に基づいて議論されてきた感覚融合認知の原理とメカニズムを、典型的な現象を元に解説する。
目次
はじめに
第1章 同時性知覚と時間的相互作用
1.1 感覚モダリティ間の同時性知覚
1.2 事象時間,脳時間,主観時間
1.3 主観時間に影響する諸要因
1.4 主観時間の観察方法
1.5 異種感覚モダリティ間の同時性判断における限界
1.6 時間的相互作用
第2章 空間的視聴覚相互関係
2.1 腹話術効果
2.2 腹話術効果は「本物」か
2.3 腹話術残効
2.4 腹話術効果を調節するボトムアップ要因
2.5 腹話術効果を調節するトップダウン要因
2.6 腹話術効果と一体性の仮定
2.7 腹話術効果と多感覚情報統合理論の発展
2.8 空間的腹話術効果の神経科学的メカニズム
2.9 多感覚的な運動知覚
2.10 視覚運動知覚に対する聴覚の影響
2.11 聴覚情報によって引き起こされる視覚運動の錯覚
2.12 多感覚的な運動知覚の神経科学的メカニズム
第3章 多感覚処理における空間的注意
3.1 空間的注意
3.2 視覚,聴覚,触覚における空間的注意
3.3 感覚モダリティを超えた空間的注意の移動 外発的注意
3.4 感覚モダリティを超えた空間的注意の移動 内発的注意
3.5 感覚モダリティ間における空間表象の対応付け
3.6 多感覚的な空間的注意の神経科学的メカニズム
3.7 注意のスポットライト
3.8 視覚以外の感覚モダリティにおける干渉効果
3.9 感覚モダリティ間の干渉効果
3.10 特徴統合理論と感覚融合認知
3.11 特徴統合理論は視覚以外の感覚モダリティに適用できるか
3.12 空間的注意と多感覚情報統合
第4章 感覚融合認知と質感
4.1 質感とは
4.2 多感覚的な質感知覚 視覚の影響
4.3 多感覚的な質感知覚 聴覚の影響
4.4 視覚,聴覚,触覚による木の質感知覚
4.5 多感覚質感情報統合の論理
第5章 様相内融合認知と五感融合認知
5.1 様相内,様相間,五感全体
5.2 両眼融合認知
5.3 両耳融合認知
5.4 「味覚」を中心とする五感融合認知
5.5 様相内融合認知と様相間融合認知の比較
おわりに
引用文献
索引