内容説明
貧困階層における生殖・再生産への医療的介入、子ども司法や貧児、孤児などの処遇に医療はどのようにかかわってきたのか。フロイト派の展開や知能検査などの心理学・児童精神医学上のツールの展開は「逸脱児」のラベリングにどう寄与したのか──子どもと発達に介在する医学のあり方の編年史を子ども史の視座から解き明かす。
目次
序 章 医学が子どもを見出すとき[野々村淑子]
第I部 「医学」による「子ども」の発見
第一章 一八世紀末アメリカの医学と子ども・家族の交差――ベンジャミン・ラッシュの医学理論と社会改革思想、家庭生活の連関に着目して[乙須 翼]
はじめに
第一節 医療による人間の身体と精神の健全さの保持
第二節 社会改革の要としての家庭
第三節 ラッシュの家庭生活と医学理論および社会改革思想の往還
おわりに
第二章 一八世紀イギリスの助産救貧をめぐる産み育てる身体の科学化――子どもの生命への配慮と女性産婆[野々村淑子]
はじめに
第一節 医療救貧のなかの女性産婆/男性産婆
第二節 女性による産婆術書の展開――産み育てる身体の構築
おわりに
第三章 一九〇〇年前後の岡山孤児院における看護と病気――看護婦の経歴と仕事に注目して[稲井智義]
はじめに
第一節 吉田いのの経歴と仕事
第二節 岡山県私立衛生会産婆及看護婦養成所の設立と概要
第三節 孤児院看護婦になった卒業生の経歴と仕事
第四節 岡山孤児院の病室と看護、衛生、看護科
おわりに
第II部 医学調査と衛生管理
第四章 二〇世紀初頭ドイツにおける「危険にさらされた子どもたち」の保護と医療の介入――「ドイツ児童保護センター」での取り組みを中心に[杉原 薫]
はじめに
第一節 前世紀転換期ドイツにおける子どもを取り巻く医療の様相
第二節 「ドイツ児童保護センター」の設立と役割
第三節 「ドイツ児童保護センター」における取り組みの実際
おわりに
第五章 二〇世紀転換期イギリスにおける子どもの栄養をめぐる「科学」的な議論――学校給食実施過程に焦点をあてて[草野 舞]
はじめに
第一節 二〇世紀転換期イギリスの児童保護策の展開
第二節 子どもの栄養問題をめぐる「科学」の領域での議論
第三節 求められる学校給食の内容とその役割
おわりに
第六章 植民地朝鮮における都市細民「土幕民」の社会医学的調査――「生れながらの土幕民」の発見[田中友佳子]
はじめに――都市細民「土幕民」の問題化
第一節 社会医学・社会衛生学の流入――日本「内地」から植民地朝鮮へ
第二節 土幕民に対する生活調査と衛生調査
第三節 衛生調査における「土幕民児童」の存在
おわりに――「生れながらの土幕民」に対する不安
第III部 発達心理学・児童精神医学
第七章 保護複合体と愛着理論――「論争」期の精神分析的子ども像をめぐって[松本由起子]
はじめに
第一節 ボウルビィイズム概観
第二節 愛着理論と「保護複合体」
第三節 精神分析的子ども像:「子どもを子どもとして見ることは可能か」
おわりに
第八章 アメリカ少年司法における医学の導入と展開――フィラデルフィア市立裁判所の医療活動(一九一四年~一九二七年)に着目して[大森万理子]
はじめに
第一節 少年裁判所における医学の導入と医療ソーシャルサービス
第二節 精神医学・心理学の重点化
第三節 少年非行の医学化の言説
おわりに
ほか