内容説明
江戸川乱歩賞受賞第一作
2022年のミステリーランキングを席巻したZ世代のアガサ・クリスティーが描く哀しき連鎖殺人
「私たちが絆を断った日、島は赤く染まった。」
復讐を誓う男がたどり着いた熊本県の孤島(クローズドアイランド)で目にしたのは、仇(かたき)の死体だった。
さらに第二、第三の殺人が起き、「第一発見者」が決まって襲われる――。
2020年8月4日。島原湾に浮かぶ孤島、徒島(あだしま)にある海上コテージに集まった8人の男女。その一人、樋藤清嗣(ひとうきよつぐ)は自分以外の客を全員殺すつもりでいた。先輩の無念を晴らすため--。しかし、計画を実行する間際になってその殺意は鈍り始める。「本当にこいつらは殺されるほどひどいやつらなのか?」樋藤が逡巡していると滞在初日の夜、参加者の一人が舌を切り取られた死体となって発見された。樋藤が衝撃を受けていると、たてつづけに第二第三の殺人が起きてしまう。しかも、殺されるのは決まって、「前の殺人の第一発見者」で「舌を切り取られ」ていた。
そして、この惨劇は「もう一つの事件」の序章に過ぎなかった――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
467
本格ミステリ的舞台の上で展開される連続殺人を描く第一部と、刑事小説テイストの第二部で構成され、そのうえで全体に浪花節をまぶしたごった煮感のある作品。満腹になりそうなのに、なぜか味気ない読後感だった。第一部で犯人が明かされ、第二部でひっくり返すかと期待していたら、ただ犯人の背景を掘り下げただけで終わったのが大きな要因。舌の切断や、第一発見者が次の被害者になるなど、魅力的なホワイダニットを作り上げる手腕は、たしかにクリスティを連想させるものがある。ただやはり、舌の切断は必然性が乏しくきれいにまとまらなかった。2023/11/14
starbro
407
第68回江戸川乱歩賞受賞後第一作ということで読みました。 荒木 あかね、2作目です。 Z世代のアガサ・クリスティーらしくオマージュ感が漂っていて楽しめました。 但し、タイトルと内容がマッチしていない気がします。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003794772023/09/24
青乃108号
371
地球滅亡カウントダウンの状況下でのミステリーという、前人未到の作品でデビューした作家の2作目。かなりハードルが高かっただろうに、やってくれた。予備知識を入れず、前作よりかなり厚めなボリュームの目次を見る。二分の一ずつで割り振られた二部構成だとわかる。一部はよく見るパターンの孤島でのクローズド・サークル物。一旦解決したように思わせ、第二部は全く新しい登場人物の新たな別ストーリーに入って行くのだが、そこには第一部の謎であった部分が大きく関わって。よくこれだけの込み入った物語を作り上げたものだ。俺は感動したよ。2023/11/04
パトラッシュ
351
九州の孤島が舞台の第一部だけでもミステリとして成立するところを、大阪での後日譚である第二部も加えて壮大なドラマを構築せんとした意欲は買うが、小説としては疑問符をつけざるを得ない。第一に大量殺人事件としては動機が軽すぎて、京アニ放火殺人犯と大差ない。これだけの犯罪を実行するのなら、圧倒される悪の存在が欲しかった。第二に偶然による殺人の連鎖が鼻につきすぎる。特に後半のヒロインが前半の重要キャラと二重三重の偶然で絡んでいたのは、それはないだろうと言いたくなった。乱歩賞受賞第一作ということで肩に力が入りすぎたか。2023/09/27
hirokun
250
★4 二部構成の長編推理小説。全体の長さとストーリー展開のためか第一部は、冗長な印象を持ったが、第二部に入ると一転して物語に引き込まれて一気読み。読みやすい文章になっており、第一部との関連性においても非常に楽しい時間を過ごさせてもらった。私は荒木さんの作品を読むのは初めてであるが、折角、読みやすい文章で書かれており、また、推理小説の面白さを十分堪能できる作品でもあり、今後特に、第一部における冗長な感じを払拭し切れ味鋭くスピーディーな展開を期待したい。2023/10/16