内容説明
シベリア鉄道での亡命旅行「トランク」、満洲で芸者をしていた女性の一人語り「幕切れ」。旅を愛した林芙美子は、自身の訪れた国々を積極的に小説に描いた。庶民目線を貫いたその筆は、戦前の日本人が海の向こうの〈大陸〉に抱いた希望と憧れ、そして敗戦で負った傷跡を克明に写し取っている。絶筆となった「漣波」ほか欧州、ロシア、満洲を描いた小説七篇と、川端康成が単行本『漣波』に寄せた「あとがき」を収録。〈解説〉今川英子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
papico
15
まだ日本語が現代語になりきる前の小説だから、口語文にカタカナが使われていたりして、頭の中で古い映画の女優さんのしゃべり方になって読んでしまったよ笑。私の知らない時代の知らない国を旅したり暮らしたりする話。そんな中で女としての生き方を考えたり、恋愛をしたりする。現代女性、そして自分と共通するところと、しないであろうところが面白かった。2026/05/10
田中峰和
3
戦中は戦意高揚のため、多くの作家はペン部隊として戦地に駆り出された。林芙美子もその一人。賢い作家たちにとって、この戦争がどこに向かうのかはわかっていたはずだが、時代には歯向かえなかったのだろう。タイピストとして外地に職業婦人たち、兵隊たちの性のはけ口として流れて行った女たち。戦争が終わっても幸福な暮らしが待っていたわけではない。徴兵で駆り出された男たちも不幸だった。「雨」の主人公は、生きながらえて帰国したら、既に戦死として扱われ、嫁は弟に嫁いでいた。林は統制されない時代を迎え、罪滅ぼしをしているようだ。2024/10/02
eriko
2
初めての林芙美子。こんなおもろい小説、戦前に書いてはったんや!「いいエスプリとファンタジー」2026/06/10
たつや
2
生涯に十回、林芙美子は海外旅行をしたそうで、本書では、その旅をモチーフに六つの小説と一つの手記を収録している。林芙美子はポップで聡明な印象の読みやすい文章が特徴だ2024/03/19
mimosa
1
芙美子さん自身が「観念を突き抜けて、形而上的なものを突き抜けて、私は単純に人間の心底をつかみたい気がしてる。」と言い、「何気ないデタイユを生かして書くという事が、私の小説の根底だ。人生の何処にでも、人間は息をしているといったデタイユに私は興味がある。私という作家はそのような作家だ。」という特色も、未完の女家族や漣波に十分うかがえる。と川場康成氏があとがきに述べたように、建前より本音を大事にする作者の生き様みたいなが、私たち女性を何処か勇気づけてくれるようで、読んでいて心地よく感じた。2023/10/22
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