内容説明
探偵・鯉城は「失恋から自らに火をつけた男」には他に楽な自死手段があったことを知る。それを聞いた露木はあまりに不可思議な、だが論理の通った真相を開陳し……男と女、愛と欲――大正の京都に蠢く情念に、露木と鯉城が二人の結びつきで挑む連作集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
203
気になっていた伊吹 亜門、初読です。 本書は、大正浪漫京都抒情ミステリ連作短編集でした。 オススメは、『西陣の暗い夜』&『青空の行方』です。 https://www.hayakawabooks.com/n/n9efcbd1012112023/09/29
パトラッシュ
190
大正の京都が舞台だが、『刀と傘』や『幻月と探偵』に比べ歴史ミステリの色彩は薄い。露木と鯉城の生い立ちや安楽椅子探偵を組む動機などで雰囲気を出そうとしているが、テーマや展開は現代でも通用する。この調子で進む1話から3話までは印象の薄い淡彩画を思わせるが、4話と5話で一気に話がひっくり返りキュビズム的な画面に一変する。一気読みして初めて納得できる、いわば構成を楽しむ連作集なのだ。作者は楽しく書いたのかもしれないが、今ひとつ感が拭えないのも事実。血まみれの不安な時代を背景にした方が、より本領を発揮できるのでは。2023/09/12
ちょろこ
146
せつない一冊。大正時代、京都、探偵のワードに惹かれて手にした作品は病弱な露木と元警察官のアクティブな探偵、鯉城、この二人がさまざまな謎を独自に解き明かす五話からなる連作ミステリ。露木の目から鱗の謎解きはハッとするほどの見せられ感。この安楽椅子探偵の鮮やかな謎解きが、ある意味単調さが続くのかと思いきや、ある時点でガラッと色味が変わる。まさにせつなさ色にせつない吐息。秘め事ほど心キュッとくるものはない。降り積もる雪はまるで一変する景色、胸の内を隠し何かを隠す象徴のよう。こういうテイスト好き。また会いたい二人。2023/09/21
いつでも母さん
141
大正時代の京都・・それだけで期待して読んだ。あれ・・?とページをめくる手が進まない。だがしかし連作5話、二人の関係や心情が露わになる頃には、カバーの装画のイメージがどんどん脳内で膨らんで好い(笑)ミステリー色は低い感じもするが、それはそれで・・露木と鯉城のこの先をもう少し読みたい。2024/02/04
R
107
大正の京都を舞台にした安楽椅子探偵ものといっていいのか、クラシカルな雰囲気と設定だけど、内容は現代調のミステリ小説でした。いくつかの事件が安楽椅子探偵によって、解かれていく感じではあるのだが、解き明かしたところであまり意味がない終わってしまった事件であったりするのだが、心中であったり動機や行動論理、倫理が文学めいててちょっと理解しがたいなどと思っていたら驚かされる真相が待っていた。ミステリではあるが、それ以上に主役二人の絆や情緒を描いた小説だった。2024/01/20