内容説明
かつて花街として栄えた四谷荒木町は、小さな稲荷神社を中心に美酒と美食が集まる大人の街。その石畳の坂道は、不思議な街へと続いている――。仕事でこの街を訪れた行原暁生は、謎めいた芸者に誘われて、時が止まったかのような花街・荒木町へと迷い込む。なぜ自分はこの街に呼ばれたのか。どうすればもとの世界に戻れるのか。不思議なバーのマスターや半玉の少女に導かれて、行原は自分自身の過去と向き合うことに。切なく優しいラストに涙が溢れる書き下ろし長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
124
要するに、芸者さんのしきたりや仕組みを学びつつ、荒木町(東京新宿区)を舞台にした不思議な話!行原が夢?幻?の世界に入り込んで、あーだこーだして、脱出をしようとするんですが、序盤は入り込めず、よくわからなかった。中盤、ようやく物語を理解したら一気に読むスピードが加速しました。ラストは切なく優しさが溢れた終わり方でしたので、物語の設定というか、構成がわかりやすければ、もっと面白かったと思います。ちょっと惜しいかな。2018/05/03
いたろう
70
新宿区荒木町。谷底のような地形、坂と階段、迷路のような路地、かつての花街であり、今でもその風情を残す街。以前、近くで働いていたことがあり、気になって手に取った。ちょっと神楽坂に似ているが、神楽坂が舞台の小説は多いのに、荒木町が舞台の小説は、あまり聞いたことがない。上司に呼ばれて行った荒木町で迷子になり、気づいたら花街の時代の町にいて、抜け出せなくなった主人公。繰り返す、夜だけの町。谷底のような地形と迷路のような路地ゆえ、抜け出せないという状況が、本当にあるように思えてくる。また荒木町に行ってみたくなった。2019/06/15
ネムコ
30
恒川さんの「夜市」みたいに迷子の気分を味わいたくて手に取りました。しかしこれは同じ迷子でも、誰かに作られた迷路を歩かされているようでした。誰が味方なのか敵なのか。ルールは? どうしたらこの迷路を抜けられるのか。明かされないままに、角を曲がる度に違う風景、違う立場、違う時代…。酔ってしまいましたよ。最後に種明かしがあるのですがあまりスッキリせず。残念。2018/06/30
Yu。
25
夢か現か‥ 先程までいた場所がほんの僅かな時間で過去のソレに変わってしまい、異空間から出れなくなった主人公だが、条件次第で元の世界へ戻れるという。。人生は航海 人生は後悔‥ 大人になるに連れとても沁みる言葉です。過ぎ去った事だからと心に蓋をしっぱなしにするのではなく一度自分を顧みる時間も大切かと。。2019/08/03
まっきー☆
12
図書館本&初読み作家さん。読友さんのレビューを拝見して、とても気になった本。すごく不思議な世界観。確かに、荒木町ならそういう異世界に陥ってしまっても、不思議はないような気がする。昔上司に連れて行ってもらった荒木町を思い出しながら、読了。戻ってこられないのは困るけれど、もう一度荒木町で飲みたいな~。あ、もちろん現実の世界で。笑2020/04/08