内容説明
カール大帝の死後、フランク帝国は3分割される。そのひとつ、東フランク王国の貴族の子として912年に生まれたオットーは、父による東フランク王位獲得の後、936年、国王に即位する。東方異民族による度重なる侵攻、兄弟や息子たちの叛乱、3度のイタリア遠征と、その生涯は戦役の連続だった。カール大帝の伝統を引く皇帝戴冠を受け、のちに神聖ローマ帝国と称される大国の基盤を築いた王者の不屈の生涯を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
121
『ドイツ誕生』に続く神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世の伝記だが、前著よりも中世欧州の政治・社会情勢が綿密に書き込まれている。当時の史書を多く引用し、様々な地図や系図、写真で同名だらけの複雑怪奇な歴史理解を助けてくれる。特に当時のバチカンの力の大きさと、娼婦に支配された教皇をはじめ高位聖職者とオットーが衝突しながら協力するようになった事情が見えてくる。日本で言えば身内に裏切られ続けた信長や秀吉が、本願寺と和解して各地の寺を行政機関化したようなものか。国家=組織という現代の観念で過去を見る危険性を痛感した。2023/09/24
サアベドラ
42
オットー1世の一般向け評伝。2023年刊。著者の専門はオットー3世で、本書に出てくる史料をすべて邦訳しているガチガチの中世史家。そのため前年に出た評伝よりも史料の引用が多く少々堅い内容だが、新書の読者が楽しめるよう努力の跡が見受けられる。前半のドイツ諸侯相手の争いは言ってしまえば同レベルの主導権争いで退屈だったが、後半のイタリア遠征やビザンツ皇帝を相手取った争いは(お互い偏見にまみれすぎていて)面白かった。終章でのオットー1世の歴史上の評価と位置づけも現代歴史学に即したバランスのとれた記述で信頼に値する。2024/01/30
よっち
36
カール大帝の死後、3分割されたフランク帝国。そのひとつ、東フランク王国の貴族の子として生まれ、神聖ローマ帝国の基盤を作った不屈の生涯を描く一冊。父による王位獲得の後、東フランク国王として登位して、最終的にローマでカール大帝の伝統を引く皇帝戴冠を受けたオットー大帝。とはいえその偉業の一方で度重なる東方異民族による襲撃があり、兄弟や息子たちの叛乱に振り回され、たびたび繰り返されたイタリアへ遠征があって、戦いに明け暮れていた激動の生涯を思うと、心休まることなどなかったのではないかと思わずにはいられませんでした。2023/09/19
kk
31
図書館本。後に神聖ローマ帝国と呼ばれることとなるドイツ・中欧的政治秩序の創設者、オットー一世の評伝。同時代的な原典に則った、新書にしては極めて堅気な語り口。馴染みの薄い人命や地名が頻出することもあり、読んでてちょっと鬱陶しく感じることも。他方、政治的・社会的な混乱の克服に向けた新生秩序の悩みや苦労がビビッドに感じられ、また救済史的な視点なども添えられて、時代の雰囲気を垣間見させる、読み応えのある一冊でした。2023/09/23
Miyoshi Hirotaka
30
ローマ帝国の街道建設によりヨーロッパはイタリア半島から大陸へと拡大し、ほぼ今の領域になった。一方、そのインフラにより異民族の侵略に脆弱になり、西ローマ帝国は滅んだ。そこに再び統一をもたらしたのが、神聖でもローマでも帝国でもない神聖ローマ帝国でその樹立者がオットー大帝。これを第一帝国とし、ビスマルクの第二帝国、ヒトラーの第三帝国がドイツ民族の版図指向とアイデンティティ確立のストーリー。第四帝国はまだ架空だが、ローマ帝国の継承者、ドイツ人の王国など様々な切り口から発生する捻れたアイデンティティに悩み続ける。2023/08/26
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