岩波新書<br> 医療と介護の法律入門

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岩波新書
医療と介護の法律入門

  • 著者名:児玉安司
  • 価格 ¥1,056(本体¥960)
  • 岩波書店(2023/08発売)
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  • ISBN:9784004319795

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内容説明

医療と介護は身近でありながら,関連する法制度は複雑である.病院での医療事故,医療安全,医療のキーパーソンと後見人制度,医療と介護の連携,診療データの利活用,医学研究の倫理,人生最終段階の医療など――.それらをめぐる法制度を,国内外の例とともに語る.激変する医療と介護をより深く理解するための1冊.

目次

はじめに 医療と介護の場で法律が身近に
変貌していく医療と介護の法律
社会保障の「公助」「共助」「自助」
感染症法と新型インフルエンザ等対策特別措置法
この本でお話ししたいこと
第1章 医療と介護の法律
1 日本国憲法の中の医療・介護制度
自由の世界とその限界
公共の福祉の世界
社会保険の登場
2 医療法改正の軌跡
戦前の国民医療法
憲法,そして,医療法と医師法
超高齢社会を視野に入れた医療法改正の歩み
医療法の改正と一条の軌跡
医療法一条が示す今後の方向
第2章 医療安全と医療事故調査
1 医療事故,そして医療不信
一九九九年から激増した医療事故報道
きっかけは三つの事故報道
医療の問題点
「異状」を届けるということ
医療不信から医療崩壊へ
2 医療安全の始まり
増える医療過誤訴訟
医療の品質保証(QA)
品質改善(QI)へ
不注意やエラーを制御する方法
失敗から学ぶ組織文化,成功から学ぶ組織文化
誤注射事故を考える
アメリカ学術会議報告「人は誰でも間違える」
「四万四〇〇〇人から九万八〇〇〇人」の根拠と批判
医療の不確実性
3 医療法改正
森報告書「医療安全推進総合対策」
高久報告書「今後の医療安全対策について」
4 医療事故調査制度
アメリカの医療事故調査の五つの側面
記録に対する姿勢の違い
内部討議の自由の保障
医師免許制度の違い
監察医などによる死因調査制度
日本のモデル事業の発足
医療の評価の方法
日本医療安全調査機構の発足
医療事故調査制度創設までの議論(1)検視との関係など
医療事故調査制度創設までの議論(2)無過失補償制度との関係など
第六次医療法改正と医療事故調査制度
第3章 医療訴訟を考える
1 損害賠償の原則
過失責任主義と金銭賠償の原則
金銭による 補についての疑問
過失責任主義の困難
過失責任主義の例外
2 日本の民事医療訴訟
民事医療訴訟の件数の推移
最高裁の二一件連続破棄判決
司法制度改革と医療集中部の設置
医療訴訟の審理
専門知識の導入
鑑定という手続
和解の増加
3 医療ADR
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
医療ADRへの取り組み
4 無過失補償制度
フランスの選択
日本の無過失補償制度
医薬品副作用被害救済制度
第4章 超高齢社会の介護と医療
1 社会保障を支える社会的・経済的条件
ケインズ・ベヴァリッジ型福祉国家の構想
第二次世界大戦後の高度経済成長
低成長経済への対応
2 超高齢社会を前にした医療と介護の改革
医療の改革
介護の改革
家族の介護力
3 社会福祉基礎構造改革と介護保険
社会福祉基礎構造改革とは
社会保険としての介護保険
介護保険における「措置から契約へ」
成年後見制度の導入
「親亡き後」のサポート
「意思決定支援」という考え方
4 医療の同意
虐待防止法の制定
患者の「自己決定権」の二つの側面
「同意」をとること
5 医療機関の「応招義務」
医師法一九条の応招義務
医師法の仕組み
医師の業務独占
医師の「応招」義務
医療法との矛盾の拡大
患者側の思い
医師の働き方改革
令和元年医政局長通知による医師法の解釈変更
第5章 人生の最終段階の医療
1 二つの裁判例
名古屋高等裁判所昭和三七年一二月二二日判決
横浜地方裁判所平成七年三月二八日判決
誰がキーパーソンか
現場の直面している問題
「治療中止の是非」の問題の多様性
「尊厳死」
DNR
2 医療に関する司法判断と「ガイドライン」
いくら頑張っても,それ以上のことはできない
最高裁の判断と厚生労働大臣の判断
検察官の起訴便宜主義
3 ガイドラインの形成
終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン
ガイドラインの改訂
4 アメリカにおける生命維持治療の中止や差し控え
カレン・クインラン事件
ナンシー・クルーザン事件
生命倫理と司法制度の日米比較
5 残された課題
ひとりひとりの問題として社会全体で考える
第6章 倫理委員会と医学研究
1 人で試すということ
創薬や医療技術の開発と倫理委員会
安全性と有効性を確かめる手順――「治験」「臨床試験」
ナチスの人体実験とニュルンベルク綱領
ニュルンベルク綱領の残した課題
ジュネーブ宣言
ヘルシンキ宣言
ヘルシンキ宣言における同意
2 倫理委員会
タスキギー梅毒放置実験,そしてベルモント・レポート
レイマン・コントロール
ミレニアム・プロジェクト
研究倫理審査委員会の困難
レイマン・コントロールを超えて
3 利益相反(COI)の管理
他人の利益を第一にする「フィデュシアリー」
「情報」と「リスク」
「利益相反」
ムーア事件
経済的利益のバイアス
4 臨床研究法の制定と課題
相次ぐ研究不正
医学分野の研究不正の刑事事件
臨床研究法,特定臨床研究審査委員会,そして臨床研究中核病院
EUの工夫
アメリカ,FDAの工夫
元気の出る研究倫理を求めて
第7章 医療情報の利活用
1 医療情報の利活用は何をめざしているか
高度情報社会の医療
医療情報とプライバシー
アメリカでのAI開発の例
2 海外の法制度の動向
OECDで最下位といわれた日本
患者自身への診療情報の提供
アメリカのHIPAA
EUの一般データ保護規則
3 個人情報保護法と次世代医療基盤法
日本の個人情報保護法
同意原則とその例外
次世代医療基盤法
今後への期待
おわりに
主な参考・引用文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

31
社会保障の一環として設計され、身近でありながら関連する法制度は複雑な日本の医療と介護。時とともに変化してゆくそれらをめぐる法制度を、国内外の例とともに語る一冊。日本国憲法の中で医療介護制度がどう位置づけられているのか、どのような事情から変更が加えられたのか。そして1999年から激増した医療事故報道からの医療不信と激増する医療過誤訴訟、倫理委員会と医学研究、医療情報の利活用といった実状から、世界との協調体制や比較も交えて解説されていて、分かりやすい情報提供だけでなく理解しようとする姿勢も重要だと感じました。2023/08/14

zoe

17
2023年。法律家でお医者さん。戦後、医療薬事の仕組み、社会保障の仕組みが発展する。医療事故と賠償の考え方も変化。医療不信と医療崩壊のせめぎあいから、賠償基金の均衡ポイントもずれた。尊厳死の判断。自己リビングウィル。医学研究の倫理。利益相反。研究不正(捏造・改竄・盗用)。情報の利用と個人情報。研究の自由。ハードローとソフトロー。著者の思う3つのジレンマ。最低限と最善。自由と公共。合理と不合理。自由は人間の尊厳そのもの。2023/09/07

とく たま

7
医療の法律の歴史成り立ち、医療事故や創薬に関わる法や裁判例、介護保険などどれも興味深く読ませていただいた。・・・わしには少し難解じゃが(・・;)2023/09/27

てくてく

6
医師としての経験を持ち(医学博士でもある)、弁護士としても活躍する著者による医療と介護に関する法律の解説。介護よりも医療がメインになっているが、岩波新書の中でも割と手堅い一冊になっている。医療事故調査に関する部分が特に参考になった。2025/02/08

みかん。

4
2023年刊。2024/12/30

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