内容説明
考える力とは、問う力のことである。
哲学対話の第一人者が、考える際の起点となる「問い方」をわかりやすく解説。
【はじめにより】
日本では教育政策において、2000年代以降、ゆとり教育が本格化するなかで、思考力の育成を重視してきた。
その後、ゆとり教育からは方向転換したが、思考力を育てる方針は変わっていない。
そのさい「今の子どもは考える力がない」ということが大前提になっていることが多く、
大人たちは、まるで自分たちには考える力があるかのように言う。自分のことは棚に上げて、世を憂い嘆く。
しかし考える力が弱いのは大人でも同じことで、人生経験の長短に関わらず、日本の社会全体に見られる症状である。
長年生きているのに身についていないぶん、大人のほうが深刻かもしれない。
思考力育成の必要が唱えられてから40 年たった。
それ以前も、それ以降も、考える力が一向に育てられていないとしたら、
その原因の一つは、間違いなく大人も考える力がないからであり、
どうすればそれを育てられるか分からないからだ。
考えることは問うことに基づいている。考えが漠然としているのは、
問いが漠然としているからだ。具体的に考えるためには、具体的な問いを立てなければならない。
問いの質と量が思考の質と量を決める。要するに、考える力をつけるために重要なのは「問う力」である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hiace9000
114
『哲学』と聞くと何やら小難しく縁遠いもののように感じていたわたし(これも明らかな偏見であり思い込みだったことを、本書を読み「自らに問うて」やっと理解できた)。だが「考えることの楽しさ」、「問うことの奥深さと軽やかさ」は新発見であり、"哲学ってオモロいやん"ーなのである。答えのない問いに答えを出そうとするたゆみなき営みは、既に身の回りには嫌というほどあるし、日々それらと向き合い、問いつづけながらわたしたちは生きている。その感覚的に過ぎなかった問いを、思考的な問いとして、「問う」行為の実体を学ぶことができた。2024/08/07
アキ
102
考えることは問うことから始まる。何を問うかはその人の個性につながる。問うということは何に興味を持っているか、ひいては自分の関心領域を知ることになる、といった内容を予め予想して読んだが、まるっきり違っていた。問うことの実践と、問う力の養い方のどちらかと言うと方法論のような本であった。本書の題である「問うとはどういうことか」という問いは、本書によると、本質的な問いであり、考えるための問いということになる。問いの方法論として、一方向的と多方向的の考え方は参考になるが、それは視点の持ち方と言い換えることができる。2024/06/21
けんとまん1007
70
良い問いは、良い答え(結果)につながると、以前、読んだ本を手にして納得した。それ以来、問い、問うことを考えるようになった。まさに、問うとは哲学そのものである。問いをどのように考えるか、その意味は何かについて、いくつもの方向性が提示されている。この本自体が、問いを読者に問うているのだと思う。私見ではあるが、今は、問うこと(考えること)を厭い、答えを探すことばかりに眼が向いているのではと思う。だからこそ、問うことが大切だと改めて思う。2023/11/24
ちくわ
26
とても勉強になりました。何のために問うのか(WHY)に始まり、何を、どう、問うのか(WHAT/HOW)まで、汎用性が高い、「問い」のバイブルだと思いました。粘り強く問う最大の目的は、常識や偏見から自由になること、それにより人生の幸福度が向上すると信じます。(☆5)2024/03/28
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
22
めちゃくちゃ良い本だった。 これはぜひ子どもにも読ませたい。2024/01/29
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