わたしの香港 消滅の瀬戸際で

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わたしの香港 消滅の瀬戸際で

  • ISBN:9784750517919

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内容説明

〈デモでたたかう若者は何を守りたかったのか〉
絶望的な状況にあっても人々は、文学を読み、音楽を聴き、未来を思い描く。
迷いや葛藤を抱えて生きる人々、そして失われゆく都市の姿を内側から綴ったノンフィクション。

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それでも香港はそこに生きる人が愛さずにはいられない文化が息づく街である。
本土に まれていく旧植民地の矛盾や葛藤、そして魅力を柔らかく繊細な感性で描く。

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都市から自由が消えていく様に、ともに迷い、引き裂かれつつも、 そこで生きようとする人々の姿に迫っていく。
ミレニアル世代の著者が記録する激動の一九九七年から二〇二〇年。

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【目次】
■はじめに
■断り書き
■二〇二一年、香港の地図

第一部
 ■一九九七年
 ■祭りとしきたり
 ■パラレル・ワールド

第二部
 ■二〇〇三年
 ■二十二人のルームメート
 ■二〇一四年
 ■五里霧中

第三部
 ■インターナショナル・スクール出身者
 ■言語を裏切る者
 ■工場へようこそ
 ■煉獄の都市

■謝辞
■訳者あとがき
■原註

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まーくん

79
読み友さんの感想に「面白いかと言われれば面白くない。読み進めるにはエネルギーがいる。」というユニークなものがありましたが、確かに面白くない。1993年生まれの著者の半生が’97年に中国に返還された香港の一国二制度の”破綻”に至る四半世紀の歴史と絡み合いながら語られる。「返還」は著者4歳の時のことで、彼女の半生はほぼ”中国の香港”の時代に生きていると言える。彼女は労働者階級の家庭に属しているにも拘らず、小学校はインターナショナルスクールという富裕層子弟が通う英語で教育を受ける学校に通った。→2024/07/10

踊る猫

32
この著者はきわめて聡明な人物と見た。そして、同時に(下衆な表現になるかもしれないが、それ相応の「生きづらさ」を抱えつつ)全力を込めて自らを開示することに挑む勇気をも備えた、恐るべき力を秘めた人であるとも。確かにここで語られる香港像をそのまま鵜呑みにしてはいけないだろう。あくまで著者というフィルターを通した香港であり、ゆえにフェアな立場から書かれたルポルタージュを期待すると火傷を負う。しかし、ここまで自らのよって立つ土地を愛憎を込めて語れるものだろうか。そう受け取ると、この「メモワール」が愛おしく思えてくる2024/03/15

踊る猫

30
香港とはどういうところなのか。著者はまったく不器用で嘘がつけないたぐいの人のようで(だからこそ精神を病み、赤裸々に綴るように精神科の門を叩くことにもなるのだろう)、ぼくたちがよく知るパブリックイメージとしての香港をそのままなぞることを嫌い、そこに生きた人間しか記せなかった空気をそのまま表象しようとする。その表現の過程で著者は「ここまでやるか」と読者たるぼくをたじろがせるほどさまざまなことがらをあからさまに記し、彼女がどんなコネクションによって生きながらえてきたかにも触れる。その切実な筆致をどう受容すべきか2025/07/12

踊る猫

30
「刺さる」1冊だと思った。ぼくはついつい香港を扱った作品の中に「メディアが流布した」「おなじみの」風景を見てしまう。洗練された先端をゆく都市にして、催涙ガスの匂いが漂う自由民主化の土地でもある、と。違う、とこの著者は冷や水を浴びせる。著者はカミングアウトするのに勇気を要しただろう自らの生きづらさにあふれた半生まで綴って、そうした既存の香港を描くジャーナリズムが見ようともしない「わたしの香港」を克明に描写する。それは世界的な風潮である英語帝国主義やオリエンタリズムをも指弾する域に達しこちらを冷徹にたたっ斬る2023/06/24

buuupuuu

19
1997年以来香港は曖昧な状態にあり、暮らしにくく、愛着も湧きにくい場所だったようだ。著者の個人的な体験が香港の社会の問題へと繋がっていく。インターナショナルスクールでの格差の経験。崩壊寸前の精神医療体制。狭く高い住居。工業ビルで密かに行われるライブ。香港を語る言葉は英語話者に独占されているが、香港では言語的アイデンティティがしばしば分断へと繋がる。著者自身が香港では曖昧な存在であり、著者は常に香港との距離を測りかねているようだ。『わたしの香港』は日本独自のタイトルだが、なかなかいいタイトルだと思う。2023/07/16

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