ちくま新書<br> 病が分断するアメリカ ――公衆衛生と「自由」のジレンマ

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ちくま新書
病が分断するアメリカ ――公衆衛生と「自由」のジレンマ

  • 著者名:平体由美【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2023/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075710

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内容説明

コロナ禍のアメリカでは、迅速な疫学調査とワクチン開発がなされたにもかかわらず、多くの死者が出た。ワクチン接種に当初から反対が根強く、マスク着用では国が分断された。アメリカの公衆衛生が抱える深刻なジレンマ――国民の健康と自由な活動という二律背反の価値のどちらを優先するかをめぐって、どんな論争があったのか。20世紀初頭以来の公衆衛生史を繙きつつ、社会格差・地域格差・人種格差などによって分断されているアメリカの諸問題を追究する。

目次

はじめに/第一章 そもそも公衆衛生とは何か/公衆衛生の三要素/数を数えることの諸問題/健康教育の光と影/行動制限の影響/機構の整備と運用/第二章 「自由の国」アメリカ──個人の選択と公衆衛生管理の相克/1 アメリカの自由のイデオロギー/「抑圧」が可能にした自由/自治・権力肥大化の回避・選択肢の存在/2 公衆衛生政策に対抗する自由の「論理」/慣れと読み替えの繰り返し/新しい病気の出現と繰り返される抵抗/3 自由のイデオロギーと政治制度/奴隷解放のロジック/通商権限と食肉検査法/4 連邦と州の役割の相克──州際通商を規制する連邦、住民の健康管理を統括する州/一九世紀末の検疫と隔離/COVID-19と連邦政府/ニューヨーク州の対策/第三章 ワクチンと治療薬──科学と自然と選択肢/1 疫学転換とワクチン/2 天然痘ワクチンと一九世紀アメリカ社会/アメリカにおける種痘の広がり/天然痘ワクチンとはどのようなものだったか/3 反ワクチンの戦い/ジェイコブソン対マサチューセッツ判決(一九〇五)/二〇世紀の反ワクチン運動/4 COVID-19下のワクチン開発と接種/飛行機の時代の感染症/前例のない速さで開発されたCOVID-19ワクチン/COVID-19ワクチン義務化をめぐる議論/黒人はなぜワクチン接種に消極的だったか/第四章 病の社会格差──貧困層を直撃する社会制度/1 国の豊かさと健康/2 社会経済的地位と健康/貧困と病/社会経済的地位(SES)への注目/3 顧みられないフロンティア/見過ごされる非都市部の貧困/非都市部の健康リスク/4 COVID-19と社会経済的地位/都市エッセンシャルワーカーの苦闘/非都市部の医療崩壊/公衆衛生に不都合な「自由」/第五章 社会の分断──「マスク着用」が象徴するもの/1 「スペイン風邪」とマスク/「スペイン風邪」/他者への配慮、自己防衛/反マスク連盟──マスクは効果なし、かえって不潔/2 COVID-19下のマスク要請/CDCの勧告/州政府の動向/反マスク法とレイシャル・プロファイリング/3 政治化するマスク着用/政治の分極化とマスク/マスクは緋文字か?/おわりに/「物語」とコミュニケーション/公衆衛生システムが支えてきた健康/あとがき/注/主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

124
アメリカ人の「自分たちのことは自分たちで決める」やり方は民主主義の理念上は間違いないが、逆に言えば外部の意見や要請を無視した独善的な決定でも「自分たちが決めたのだから正しい」と考える。多くの国や地域や民衆の協力が必要な公衆衛生問題に対し、不快であり忌避するマスクやワクチンを拒む自由があるとの勢力が政治を動かせば、相反する価値観が衝突する。これに貧富の格差や人種的思想的対立が加わり、新型コロナ禍のアメリカは社会が真っ二つに分断されてしまった。このような国をリーダーとせざるを得ない自由主義諸国の肩の荷は重い。2023/11/19

HANA

67
昨今アメリカの分断は良く語られている。報道とかのそれは保守と革新の二元論に収束されているのだが、本書はアメリカの公衆衛生という「公」とそれに対する個人の自由という「私」の分断という点から論じられているのが特徴。例えば反マスクや反ワクチンだが、それらが急に発生したのではなく長い歴史を持っている事も意外であった。当時のワクチンが特殊な状況下で打たれ事故が多発したことによる反ワクチンとか、マスクも昔の正しい知識が無かったことからの反マスクとか想像も出来なかった。ニュースの分断ではない違った分断、面白かったです。2023/08/28

大先生

10
アメリカの公衆衛生史に関する本です。科研費の助成を受けて書かれた本らしく、著者の研究成果を纏めましたというやや硬めの内容。アメリカ的自由は①自治②権力肥大化回避③選択肢の存在を内容とし、「自分たちのことは自分たちで決める」のが基本。押し付けようとすると反ワクチン・反マスク運動になってしまう。州によっては反マスク法が残っているところもあり、アメリカ人がマスクを嫌う理由が少しわかりました。2024/09/04

sk

6
アメリカを例に公衆衛生の本質について考察。2024/07/15

バーニング

4
現代のアメリカにおける分断を理解するためには歴史を振り返ったほうが良い、という形で医療史や社会史のアプローチでアメリカの公衆衛生政策の歴史を辿る一冊。100年前の反マスク法が現代にも残存する州が割と多かったこと、そしてその頃と似た文脈(自己決定権や自由の擁護)で現代の反マスク・反ワクチンの態度が繰り返されているという指摘はなかなか面白い。2023/10/24

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