内容説明
昭和~令和へ壮大なスケールで描く人間賛歌。
人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。
舞台は、令和と昭和の、とある出版社。コロナ蔓延の社会で、世の中も閉塞感と暗いムードの中、意に沿わない異動でやる気をなくしている明日花(28歳)。そんな折、自分の会社文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。
世界に例を見ない学年別学年誌百年の歴史は、子ども文化史を映す鏡でもあった。
なぜ祖母は、これまでこのことを自分に話してくれなかったのか。その秘密を紐解くうちに、明日花は、子どもの人権、文化、心と真剣に対峙し格闘する、先人たちの姿を発見してゆくことになる。
子どもの人権を真剣に考える大人たちの軌跡を縦糸に、母親と子どもの絆を横糸に、物語は様々な思いを織り込んで、この先の未来への切なる願いを映し出す。
戦争、抗争、虐待……。繰り返される悪しき循環に風穴をあけるため、今、私たちになにができるのか。
いまの時代にこそ読むべき、壮大な人間賛歌です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hirokun
262
星5 古内一絵さんは初読みの作家。百年の子も、おそらく読書メーターに参加していなければ読んでいなかった作品。まず本を読み終えて、思わず何とも言えないため息が漏れた。女三代にわたる長編大河小説。私としては、帯にある子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たないという視点以上に、出版界を例に挙げ、如何に人々が時代の影響を受け,時には率先して戦争の道に邁進することの後押しをしてきたのかという問題の重要性を感じた。私自身、戦後民主主義の中で育ち、その恩恵を享受してきたわけであるが、自らの課題は極めて大きい。2023/09/11
昼寝ねこ
238
学年別の学習雑誌で一世を風靡した出版社の今と、昭和期の苦難の歴史を綴る。もちろんフィクションなのだが出版社や作家や漫画家、創作物や起きた事件も元ネタが想像できる。物語は祖母と孫娘がキーとなって令和と昭和の交互に語られる。昭和期では戦時下の辛い話と高度成長期の話がメイン。ラストで伏線回収されるが家族にも世間にも顧みられなくなった認知症の祖母が実は凄い人だったことがわかって鳥肌が立った。小説好き、童話好き、漫画好き、怪獣好き、そしてなにより「本」が好きな全ての人にお薦めしたい。読んで良かったと素直に思えた。2024/07/21
のぶ
227
出版社の歴史にそこで働く女性を舞台に上げて描いた小説ですね。面白かったです。本作では文林館となっていますが、明らかに小学館が舞台ですね。自分が子供の頃「小学◯年生」という雑誌を買ってもらって楽しんだのを懐かしく思い出しました。戦中戦後の出版社の苦労を通して子供、女性の立ち位置を考えさせられます。戦後、児童文学繁栄のために尽力している人、そして現代この人達の苦労を伝えていこうとする姿が爽やかに感じられた。現代の主人公、市橋明日花は昔勤めていた祖母を見つけて、どう感じたかが鮮やかに描かれていた。2023/08/16
bura
212
「人類の歴史は百万年。だが子供と女性の人権の歴史は百年に満たない」コロナ禍の中、出版社に勤務する明日花は花形のファッション誌編集部から、自社で出版している児童向け雑誌の百周年イベント企画業務へと異動になる。やる気を失う明日花だったが現在、認知症を患う祖母が戦時中その学年誌の編集に関わっていた事を知った…。令和と昭和の時を行き来する、奇跡とも言える三代の母娘の物語。子供と女性の人権や文化について深い学びを得る事が出来た一冊。たった百年されど百年、もうあの時代に戻してはならない。私たちは皆、百年の子なのだ。2023/10/17
いつでも母さん
203
あった、あった。昭和真ん中生まれの私の時代に『小学〇年生』は確かにあった(買ってもらえなかったけれど)息子の小学生の頃もあったと記憶してる。今は、そうなのか・・知らなかった。それはさておき本作はちょっと惜しい感じがしてしまった。私の中で28歳・明日花に思うところがあるからかな?(汗)祖母・母・自分・・女三代の家族ドラマを戦中戦後の出版界、働く女性、いまだ存在する性差など題材は面白い。「子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。」いつか・・百年後のこの国はどうだろう。2023/09/08
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