内容説明
障害者19人が殺害された相模原殺傷事件。
報道は過熱し、被害者の名前が伏せられたことで、
犯人の不気味な笑顔やコメントばかりが垂れ流された。
「障害者なんていなくなればいい」…その思想に、賛同する人も少なくなかった。
誰もが心のおりを刺激され、異様な空気に包まれるなか、
平穏を取り戻させてくれたのは、ある障害児の父親が綴った息子への想いだった――
著者は17歳の自閉症の長男を持つ神戸金史。
RKB毎日放送の東京報道部長であり、前職は毎日新聞の記者だった。
報道する立場の人間として、障害児の父親として、今なにができるのか――
長男が自閉症だと知った頃、自閉症について調べる中、
母子の無理心中の原因に、自閉症の子の存在があることが多いと気づく。
世間にそれを知ってほしい、支えてあげてほしい、
障害のある子を殺さないでほしいと願い、
新聞記事に連載したり、ドキュメンタリーを制作し、話題を呼んだ。
本書では、詩とともに、長男の生い立ちから障害に気づいた経緯、
障害を受け入れられなかった悔悟、息子をどう育ててきたかなど、
過去の記事も織り交ぜ、長男とともに歩んだ17年の軌跡を綴る。
記者として、父として、息子への想いがすべて詰まった渾身の一冊!さらに、
妻と次男が初めて、心の内を明かした文章も収録。
障害児の家族が、今回の事件で抱いた想いとは…。
切なる叫びに胸が震える!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鈴
37
相模原殺傷事件があった後の著者の詩を読んだときには、とても共感できた。でも正直に言うならば、仕事が忙しくほとんど息子に向き合えていないお父さん(著者)よりも、お母さんのほうがもっともっと辛い思いをしてきていたはずで、だからこそ奥様の手記は説得力があった。うちにも障害を持つ息子がいるが、普通に我が子は可愛く思えるし、子供の笑顔に癒される。でも息子が障害者なんだな、普通じゃないんだなと思うのは、一歩外に出て他人の視線を感じるときだ。普通って何なんだろうな。2016/11/16
ナミのママ
27
【一万円選書】にて届いた一冊。2016/11/19
田仲
18
障害のある方や、性的少数派など、自分と異なる人間たちを、勝手に「社会の重荷」と表現できる人がいるという事実に、ただただ傷つく。仮に重荷なのであれば、一緒に持ってあげれば軽くなるよ〜って笑顔で語ったら、唾を顔にかけられてしまうのかな。私は難しいことはわからないけれど、「あなたの大切な人がそうなっても、今と同じことが言えますか?」と、自問自答する。みんながみんな同じ感覚にはならないだろうけど、どうか、無駄に他人を攻撃しない社会であってほしい。そのために、月曜からまた仕事がんばらないとな。2017/02/18
ヒラP@ehon.gohon
14
障害者の施設で絵本の読み聞かせをしていますが、いかに彼らを理解するか、どの様に受け入れるか、大変さをひしひしと感じます。家庭もいろんな問題を抱えているのでしょうね。でも、この本は救いの図書だと思います。2017/01/28
Mao
11
お母さんの言葉「(障害のある息子が)生まれてきた意味があるのか、社会の役に立つ人間なのかと自問自答することはなくなりました。 私自身、同じことを問われれば答えに詰まることに気付いたからです。何を思い上がっていたのだろうと。」 深く同感。涙と共に。2017/03/10