ポストカード

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ポストカード

  • ISBN:9784152102607

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内容説明

2003年、パリ。ある朝、著者の自宅にポストカードが届いた。差出人名はなく、1942年にアウシュヴィッツで亡くなった著者の曾祖父母とその子どもの名前のみが書かれていた。誰が、何のために出したのか。差出人の謎と戦争の記憶を著者が辿る、実話に基づく物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちょろこ

119
凝縮された想いの一冊。突然届いたアウシュビッツで亡くなった家族の名前が記された差出人不明のポストカード。誰が?なぜ今頃?ミステリアスさを軸に知られざる家族の歴史を紐解く作品。史実が浮き彫りになる過程は夢でうなされるほど苦しかった。想像を絶する負の遺産。人を人とも思わない迫害行為に一体どれだけの意味があるのか、今の世の中を重ねながら問いが渦巻く。家族の中で一人だけ生き残った祖母の苦しみ、著者の"ユダヤ人"を通して自分を見つめる姿も印象的。最後の一文にこれまでのぎゅっと凝縮された想いを感じ、ただ祈りたくなる。2023/11/17

ちゃちゃ

117
名前は、個人の生の痕跡を後世に刻む。ある日届いた一葉の葉書。そこに記された4人の名前は1942年アウシュビッツで絶命したはずの祖母の家族のものだった…。本作はナチス占領下のフランスを舞台に暗黒の時代を描く“ノンフィクション小説”。出自から消えることのない「ユダヤ人」の刻印。彼らがくぐり抜けてきた苛酷な運命を鋭く炙り出した一族の物語だ。生還した人々は差別に怯え排斥に耐え“生き残った者”として迫害の歴史を背負った。今改めて心に刻みたい。人間の尊厳を剥奪し個人の生き方を狂わせる政治社会の恐ろしさや愚かしさを。2023/11/20

アン

94
2003年パリ。著者アンヌの母レリアはアウシュヴィッツで命を落とした家族4人の名前だけが記された絵葉書を受け取る。差出人や投函された目的は不明。レリアはただ一人生き延びた母ミリアムが残した写真や文書、資料を集め、家族の歴史を辿り再構築しようと。時を経てアンヌが調査を引き継ぎ纏めた実話に基づく作品である。ロシアからパレスチナなどへ移り住み、パリへ渡ったユダヤ人家族の絆と戦争に翻弄された苦難の日々。罪なき人々への非人道的な仕打ちに胸が詰まる。ラストの真摯な言葉は命の尊厳を伝える愛に満ちた祈りでもあると思う。 2023/10/01

夜長月🌙@5/19文学フリマQ38

65
1919年から2019年のヨーロッパ(特にフランス)におけるユダヤ人家族の激動の人生を著者(アンヌ)の母親(ミリアム)を主人公に物語ります。アウシュビッツ(およびナチス)のことは誰もが知る歴史的大事件ですがそれだけではない、と言うかそのために多くの事が見えにくくなっているのかも知れません。ユダヤ人の悲劇はアウシュビッツに始まりアウシュビッツに終わったのではありません。現代でもユダヤ人は軽く、それゆえに自然に「ユダ公」などと蔑視されます。そして今の戦争。本書はノンフィクション部門で文学賞を獲得しています。2023/11/24

ヘラジカ

61
絶滅収容所で命を落とした血族を巡るファミリー・ヒストリー。素晴らしくドラマチックな展開だが大袈裟に書きてることなく淡々と記している。しかし、だからこそ読みながらあんなにも胸が締めつけられたのかもしれない。歴史のなかで圧殺された人々は、それぞれが大きな物語を有していて、その物語は何年経とうと決して終わることがなく、なんらかの形で脈々と受け継がれ、現代を生きる者たちを形成しているのだ。ポストカードの真相、終盤での作者の言葉には涙が抑えられなかった。慟哭のノンフィクション小説。素晴らしかった。必読の傑作である。2023/08/09

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