内容説明
不倫? 倫理が何かは自分で決める――。35歳の和泉桃子は当代随一の料理研究家・沢口喜久江の助手を務めつつ、彼女の夫・太郎と付き合っている。「人の夫を寝盗ること」を趣味とする桃子だったが、喜久江を心から尊敬してもいる。一方の喜久江は、太郎の女癖を受け流すのが常だったが……。“lover”と“wife”と“husband”三者の視点で語られる「危険な関係」の行方は。極上の詠美文学!(解説・平松洋子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
111
う~ん、どうしてもやはり作者さんの作品(作風)にはハマれませんでした。過去作品も何冊か読んでいて、それなりに印象的な作品もなくはないのですが、本作はボリュームの割りになかなかペースがあがらず、後半はただただ流し読みしてしまいました。料理研究家の妻、10歳年下の夫、料理研究家の助手であり夫の浮気相手三人目線による不倫&浮気物語。最初のうちは楽しんで読み進められたのですが、中盤からはもう作者さん特有すぎるカラーがぐいぐいと出され、食傷気味に。登場人物三人ともが薄っぺらな印象しか残らず、非常に残念な結果に。2024/03/10
阿部義彦
28
山田詠美姉ェ(私の二つ上、売れない漫画家の頃からの付き合い)の創作は久しぶり、前に読んだのは『私の履歴書』的な創作背景を語ったエッセイでした。オープンエンディングを嫌う彼女らしい凝った構成。他人の男を寝とった女、正妻、その旦那と、三人の一人称の文章が順番に繰り返されます。50歳の料理研究家、10歳年下でイラストレーターの夫、その料理研究家の忠実な助手35歳の桃子。この三人の前では法律など無力。社会が決めた約束事などなんのその、自分の本能と美意識という名の倫理に従う桃子の恋の行く先は。うーんこう来たか!2023/10/03
ゆきらぱ
26
読んでいる間は感想たくさん浮かんできていたけれど読み終わった今は私などの雑念はすっかりすっきり消えてしまった。さすがの山田詠美です。2024/03/05
新田新一
15
料理研究家の妻とイラストレーターの夫、妻の助手を務める女性をめぐる物語です。助手の女性は夫と不倫関係にあります。どろどろしておらず、ユーモア満載で読んでいて何度も噴き出しました。不倫が良くないことは言うまでもありませんが、道徳に外れたことをうっかりしてしまうのが人間というもの。詠美さんの他の小説のように官能的な場面は出てこないのですが、その分料理がおいしそうに描かれて、お腹のすく場面も多かったです。ほろ苦い結末が絶品。ここを読むと、作者は真のモラリストであることが分かります。2023/09/02
イシカミハサミ
12
「不倫」 恋愛のいち形態ではあるけれど、 やはり多くはタブー視する出来事かと思う。 そのせいで世間では画一的な見方しかされないし (悪い事、とんでもない、目の敵) 最近量産されている不倫ドラマは、 一時期のミステリードラマのように 非日常の負荷を登場人物に与えることで 「人間」の側面を炙り出そうとしているような作品が多くて、 不倫そのもののリアリティは重要視されていないように感じる。 しっかり不倫の一面に切り込んだ作品。 タイトルが秀逸。2024/01/12