内容説明
一九世紀末、列強に領土を蚕食されるなか、中国では劣悪な栄養・衛生状態、海外との交流拡大によって、感染症が猛威を振るう。雲南の地方病であったペストは、香港や満洲に拡大し、世界中に広がることになる。中国は公衆衛生の確立を迫られ、モデルを帝国日本に求める。本書は、ペスト、コレラ、マラリアなどの感染症被害の実態、その対応に追われる「東亜病夫」と称された中国の苦悩とその克服に挑む姿を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Tomoichi
21
タイトルの「感染症の中国史」よりも副題の「公衆衛生と東アジア」の方が内容と合っています。公衆衛生と近代社会との関係性がよくわかり、また公衆衛生と社会権力との関係も当初より課題になっていたことがわかる。まあ左の方はアナーキーな状態が大好物なので、公衆衛生よりも彼らのいう自由が生む社会混乱の方が都合がいいのだろう。何れにしても公衆衛生と国民性や社会は密接に関係しているため、海外は参考になっても答えにはならない。コロナを通して改めて日本に合った公衆衛生の理念を構築する必要を感じた。2022/07/09
鯖
20
雲南省から阿片と共に広まったペスト。イギリスのインド支配から世界的な交通網の発達と共にもたらされたコレラ。紀元前馬王堆のミイラからも卵が見つかる日本住血吸虫。台湾出兵、日清戦争、太平洋戦争と戦争のたび大発生するマラリア。人の往来が激しくなると、一地域に留まっていた風土病が抗体をもたない人にも広まり大発生することを繰り返す。2020/06/21
さとうしん
17
台湾や関東州での日本の植民地行政と公衆衛生との関係、中華民国が日本をモデルとして公衆衛生の制度化を進めたことを議論する。植民地での感染症対策は「善政」とされることが多いが、植民地統治のもとでの開発政策により、赤痢・ジフテリア・結核などは増加傾向にあったとも言う。「東亜病夫」「日本住血吸虫病」のネーミングの由来といったトピックも読みどころ。「感染症は克服されるどころか、むしろ顕在化しつつある」という著者の見通しは、初版から10年以上経って再確認されることとなったが… 2020/04/07
fseigojp
12
日本の特殊性でいえばペストが流行しなかったこと インドからコレラがパンデミックとなったことなど 勉強になった2020/10/31
ザビ
10
たまたま書店でみつけたペストやコレラの感染症史実書。「芝居小屋、浴場、飲食店等を営業停止に」「飛沫感染する肺ペスト、最も危険な場所となったのは患者収容された病院」「感染者家族への差別」「噂(デマ)の横行」など、昔と今とが妙に重なってみえてくる。非常事態下での感染抑止は行政のリーダーシップと強制力が極めて重要、と再認識できた。ちなみに「近代的な水道の整備はコレラ対策が始まり」だそうだ。コロナ対策で新たに整備されるものは何に?やっぱりテレワーク(働き方)か、それともベーシックインカムの先駆けになるか。2020/04/21
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