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内容説明
内と外という二元論を危うくする薔薇の花弁、腹からこぼれ出る腸の美しさ――皮膚や表層にこだわり続けてきた美学者である著者は、「内部へ出る」ことにより逆説的に肯定される表面にこそ、三島独自の美意識すなわちバロキスムが賭けられていると見る。内面と外面、精神と肉体、素顔と仮面、美しい無智者と醜い智者といった対比、そして薔薇のみならず作品を豊かに彩るさまざまな植物的イメージを自在に横断しながら、それらすべてが昭和45(1970)年11月25日の壮絶な自死へと収束されていく過程を詳らかにたどる、スリリングかつ斬新な三島論。文庫書き下ろし!
目次
序 昭和四十五年十一月二十五日/I 映画『憂国』と音楽/III 外面と内面/III ヘレニズム・バロック/IV 薔薇狂い/V 薔薇のバロキスム/VI 美しい無智者と醜い智者/VII 肉体の論理とその逆説/VIII 「存在の劇」 谷崎潤一郎VS三島由紀夫/IX 死の太陽/X 三島由紀夫のフローラ/XI 松へのこだわり/XII 死の様式/XIII 「動態」としての文化とその座標軸/XIV 庭と海/結 「お祝いには赤い薔薇を」/あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
70
三島は、自分自身を作品としてデザインしようと生涯追求していたひとだったのかもしれない。その結果があの自決だった。遺された作品はわたしが思っていた以上に雄弁である。『鏡子の家』は読み返さないといけないかな。2023/05/25
HANA
69
作品論ではなく総体としての三島由紀夫を追求した評論。様々なキーワードを元に三島というものを追求しているのだが、特に面白かったのが薔薇に代表されるバロキシスムと内面より外面に主を置いた思想。そして映画『憂国』から自死に至るまで。三島の内面と外面の対比というのはボディビル偏愛やナルシシズムに満ちた写真などから多くの人が言及しているけど、著者のように薔薇の花弁であったり流れ出す血であったり、希臘の彫像であったりというものを手掛かりにそれを追求していくのは極めて読み応えがある。三島作品にもう一度挑みたくなる一冊。2023/11/11
kana0202
3
三島の熱心な読者ではないが、このテマテイックな読みを展開する評論はおもしろい。読ませる。三島を久しぶりに読もうと思った。植物についての部分が特に面白かった。日本の植物は、松か。バロック的なものを見出すことは結構他の小説家にも当てはまりそうな気もする。文章の力でどれだけ読ませることができるかが、テマテイックだけに限らず、批評では重要で、その点この本は非常に普通の文章で、そこそこ、読ませる。ど 三島の同時代人だからこそかも。2023/06/23
蛙坂須美(アサカスミ)
1
三島由紀夫リレーその1 序章2024/02/07
スリルショー
1
そういえば、三島由紀夫の作品にはよく薔薇が登場するなぁ。あまり意識したことがなかった。内面(精神)と外面(肉体)の問題を仮面や耽美的な箇所から作品を読み解いている。死を美化し、死ぬことで究極の存在証明をしたこの作家の類いまれな才能の帰趨をこの一冊で堪能することができ、三島由紀夫の作品が好きな方におすすめの一冊。しかし、現代の死より生が尊ばれる時代にこの本の中に盛り込まれた思想は、あまりにも素っ頓狂で気でも違ったのかと思われるだろうが、あまりにも今の時代が偽善と詐術に満ちたとも言えるのかもしれない。2023/07/03