内容説明
平安時代後期の官僚であり、歌人としても活躍した大江匡房。
宮廷儀礼の参照元となった有職故実書『江家次第』を著し、神仏への信仰の礎を作るなど、後世に大きな影響を及ぼす多くの業績を残した。
しかし、秀でた官人としての顔の一方で、大江匡房は鬼、土蜘蛛、御霊、傀儡、占い、呪術、陰陽道などと深くかかわり、菅原道真や小野篁、吉備真備といった伝説的人物にも心を寄せた。
その理由はなんだったのか?
未来を予言する詩といわれる『野馬台詩』の読解に込められた秘密とは?
謎多きこの人物に、伝承や怪異に造詣が深い作家・加門七海が史実をもとにした大胆な推理で迫る!
目次
【目次】
序章
主な登場人物紹介
第一章 神を創った男
一 官人・大江匡房
二 小野篁とけい惑星
三 鉄鼠の血
四 大江一族と頼光四天王
五 天門攻略
六 阿保親王
七 神を創った人々
八 傀儡子たち
第二章 鎮魂の技術者
一 鬼の道
二 出雲と御霊
三 黄泉と土蜘蛛
四 御霊としての吉備真備
第三章 『野馬台詩』開封
終章
後書き
野馬台詩 巻末資料
主要参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
94
加門さんによる大江匡房に関する伝記のようなものを期待していたのですが、かなりマニアックな本であるということが後半でわかりました。大江匡房は鎌倉時代の大江広元の祖先ということも理解できました。もう少し陰陽師関連の話が出てくると思いきや、「野馬台詩」という文書を解読するところはかなり難しく私も加門さんのファンであるのですが理解できたとは思えません。しばらくしたら再読してみようという感じです。2023/10/14
たまきら
39
全く無名に等しい一人の男を「神を創った男」とまで言い切る著者に驚き読みはじめ、梅原猛氏の「隠された十字架」を読んだときの高揚を覚えた。圧倒的な主観。呪術的な言葉。祟り。怨霊。荒唐無稽な思考の暴走。1000年前の何かを紙面に起こし、何かの力を発動させようとする作者の言葉を妄想だという人もいるだろう。私は違う。森羅万象に何かの公式を求めようとした、物理学者の視点を感じる。それは真理の追及であり、同時に多大な実験の残骸なのだと思った。加門さん、もっと読みたい。あなたならこの男を、日本のカミの原点をつかめる。 2024/09/28
kk
24
図書館本。平安朝後期における知的巨星、大江匡房。かねてからkkが敬愛する加門七海女史が、この謎多き人物のオカルト的側面を解き明かそうと四苦八苦する内容。土師・出雲氏の秘密、小野篁との関係、「天門」の呪術的インプリケーション、「鬼」や「土蜘蛛」の伝説に仮託された宗教・呪術上の対峙状況などなどを縦横に語った上、往時の一大奇編『野馬台詩』の秘密に果敢に挑みます。率直に言うと、『野馬台詩』のくだりを中心に、著者にとっても些か消化不良のままな部分もあるように見受けられましたが、そこはそれ、読み応えのある一冊でした。2024/08/25
Tatsuhito Matsuzaki
9
平安時代後期に「才智は人を過ぎ文章は他に勝る。まことに天下の明鏡なり」と称され「三帝の師」とも呼ばれる一方、政争に与せず心性は歪曲(ひねくれ者)と言われた男。 #小野篁 や #菅原道真、#吉備真備 をはじめ、大江匡房を表すための登場人物が過多で、しかも著者の歴史への造詣と妄想と知識の深遠さ故に(著者も序章で予見しているが)、話が脱線拡散し過ぎて収拾がつかない感は否めません。 さらに、『#野馬台詩』の解読をする終盤に至っては、……う~ん、もう降参です💧 #野馬台詩 #未来記 #江談抄 #江帥2023/10/01
ミナ
8
平将門魔法陣や大江戸魔法陣を著した加門先生らしい粘り強い探求の成果の本だった。卒論書いていた頃を思い出し、懐かしい想いにもなった。こんなに歴史や神仏にも造詣が深いのになぁという発言がSNSで多かったから遠のいていたけど、また読んじゃいそうだわ。2025/02/02