内容説明
五年ぶりに会った長男は「大丈夫だよ」と笑ってくれた。
覚醒剤取締法違反による衝撃の逮捕。
執行猶予満了を前に、清原は想像を絶する苦痛の中でもがき続けてきた。
自殺願望、うつ病との戦い、信頼できる主治医との出会い、
そして、家族との再会。
真っ暗な闇の中でもがき続けるかつてのスターは、
夏の甲子園に決勝戦を観戦に行きたいという願いを抱くが……。
「10年も薬物をやめていた人が再犯で逮捕されたと聞くと怖くなる」
「最後の1回だけ、と考えている自分がいる」
「この4年間、マンションのバルコニーから下を見て、
死にたいと思ったことは、一度や二度ではありません」
「元妻の亜希は、息子たちにぼくの悪口を言わなかった」
「負けたと認めること、怖いと認めること。
それはぼくにとってすごく重要なことでした」
大宅壮一ノンフィクション賞受賞『嫌われた監督』の鈴木忠平による渾身の取材。
文庫化にあたり、解説に、清原氏の薬物依存症治療の主治医である
松本俊彦医師による「人はなぜ薬物依存症になるのか?」を掲載。
※この電子書籍は2020年6月に文藝春秋より刊行された単行本『薬物依存症』を改題した文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
95
清原、嫌いだった。ガラ悪くてアホと思ってた。覚醒剤で逮捕されて回復するまで。素直で子供みたいで可哀想になった。引退して人生の目標を失い、酒に溺れ、酔った勢いで覚醒剤に手を出し、暴れて妻子を失う。もう一度甲子園に行きたいと思い、身体を鍛え直し決勝戦を見に行く。高校野球が自分の原点だと気がつく。息子と再会。息子に野球を教えることが生き甲斐になる。多くの人に支えられ、お礼を言うことを覚えていく。次男が中学生時で終わるが、今年、次男は慶應高校選手として甲子園で優勝。野球音痴が読んでも涙腺に来る胸アツドラマ。お勧め2023/09/05
たまきら
43
愚直なまでにまっすぐ、淡々と言葉を紡ぐ彼のいまを素直に認めたい。自分は当時PL学園の強さ、清原選手の力強いプレーには素直に感動したし、いわゆるKKドラフトで汚い大人たちに怒りを覚え、西武で優勝する際2アウトなのに号泣している素直な彼の姿に笑ってしまった。そんな人だからこそ「現役」を奪われたときの衝撃は大きく、薬物依存という道にはまってしまったのだろう。でも、彼の後悔の日々を、私は好意的にとらえたい。だって、彼の一番身近な人たちが許しているのだから…。岸和田の番長、また屈託なく笑ってくれよ。2025/03/28
piro
34
西武ライオンズファンだった私にとって、西武黄金時代の主軸であった清原和博は間違いなくヒーローだった。それだけに覚醒剤で逮捕されるという事件は衝撃的でした。一方で、彼が「強い」のではなく「強がり」な事も薄々感じてはいたので、こうなる恐れはあったのだとも思いました。強がらずに素の言葉で綴られた薬物依存症との闘いの日々の様子は凄まじい。それでも彼が少しずつ回復していったのは周囲の人々の思いやりのお陰なのでしょう。これからも清原さんを孤独にさせず助けてあげて欲しい。そう強く願います。2025/03/27
再び読書
27
単行本で読んだのに文庫も買ってしまった。しかしながら、内容をほとんど覚えていないことに愕然とする。そして何度も泣いてしまう。一時代を築いたヒーローだけに、落ち込みも大きい。人に救われて、また、輝きを取り戻して欲しい。また、元妻である亜希さんの懐の大きさと、子供たちの彼に対する思い、優しさに涙せざるを得ない。最後の松本医師の話で、薬物依存症になる原因は、その一時体験があまりにも強烈に、人の精神に入り込む事と思っていました。しかし、心の弱さが、薬物に依存する要因と知り、考えを新たにしました。2024/12/07
みこ
20
あの日以降の清原和博の独白。逮捕されてからも執行猶予が明けてからも周り特に警察関係者からの疑惑の目は晴れない。自身も薬物への欲求が完全に途絶えたとはいえず深酒をする日がある。それでも野球の指導者、薬物依存症の救済、そして、二人の息子の父親として生きていく道を進むことを決意するに至る。彼が立ち直れるようになったのは周りの支援者に恵まれたからともいえるが、それは彼自身がかつてのプレーで多くの人を魅了したから。だから彼は素直に過去の栄光にすがったり誇りに思ってい良いのだ。2023/09/13