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内容説明
東京の都市化・近代化を進めたといわれる関東大震災(大正12年/1923年)は、実は人々に過去への郷愁や土地への愛着を呼び起こす契機となった。民俗学や民藝運動の誕生、民謡や盆踊りの復興は震災がきっかけだ。その保守的な情動は大衆ナショナリズムを生み、戦争へ続く軍国主義に結びつく。また大震災の経験は、合理的な対策に向かわず、自然災害への無力感を〈精神の復興〉にすりかえる最初の例となった。日本の災害時につきまとう諦念と土着回帰。気鋭の民俗学者が100年の歴史とともにその精神に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
newman
10
前半は、関東大震災のときにはこんなこともあったのかと読んでいました。後ろの方になってこれって関東大震災の話だっけと思ってタイトルを見直した。な〜るほど、確かに「その百年の呪縛」と考えれば何でもありかー、と思いながら読了しました。一つ思いました。大きい災害のときには流言飛語が飛び交うが止める方法はあるはずと著者は考えていると思われるのですが、それは非常に難しいのではないか。いろんな人がいるし、ほとんど無意識に悪意があるわけではなく言った言葉が、尾ひれをつけてどんどん大きくなってしまうものと思えるから。2024/03/28
V6_1800
8
関東大震災以降、震災に対して日本という国や国民がどのような動きをとってきたかが解説されている。芥川、柳田らの文学者や寺田寅彦ら科学者の見解が興味深い。彼ら含め殆どが震災契機にナショナリズムに、無意識に加担していく様子は現在に通じると思った。最近では復興五輪というテーマが全くのお題目に過ぎなかったことにも触れられていて、日本という国は変わらないのだなぁと実感する。2023/10/12
aochama
4
関東大震災後の政策を現代まで民俗学的アプローチで考察。日本人は災害を社会現象ととらえずに精神的問題ととらえているため、原因と結果を曖昧にしがちであり、その結果軍国主義に走ってしまうきっかけとなり、地に足かついた復興はねじれていくと指摘。話題が広範に展開していますが、なかなか当を得ていると感しました。最近の防災、復興がイベント色強く、空回りしている理由の一端がわかるような気もしました。2023/12/24
タイガーとらじろう
2
関東大震災発生から100年にわたる日本の軌跡。関東大震災以来発生した様々な事象に対して日本人が当事者意識をもって向き合わなかったこと、矮小化した解決策しか取らなかったことがわかる。歴史は繰り返す、というか悪い韻を踏んでいるのが、日本の近代である。2023/09/10
てるるる
1
能登半島地震から積読していた本書を読んだ。地震そのものは自然災害である一方で、社会現象と捉えることで近代化の功罪や、防災対策の甘さを指摘している。100年前の関東大震災から、東京はおそらく何も学べていないことは本書を通じて、東日本大震災や今回の能登半島地震から察せる。日本人の自然への”仕方無さ”というアニミズム的な思想への対抗が、科学技術を有した防災であったものの、この科学技術が今日の自然災害の大規模化を引き起こしているという矛盾が作られてしまっている。自然との共存を思想レベルで再定義する必要があるかも。2024/01/08