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内容説明
21世紀に入り欧米諸国にとって最大の脅威はイスラム勢力だった。だが、欧米がイスラムを理解せず、自分たちの価値観を押しつけようとしたことが、対立をより深刻にしたのは否めない。1400年前に誕生し、いまだに「生きる知恵の体系」として力を持ち、信者を増やし続ける宗教・イスラム。その教えの強さはどこにあるのか。暴力的・自由がない・人権を認めない等、欧米が抱くイメージはなぜ生まれ、どこが間違っているのか。世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代の、必須教養としてのイスラム入門。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
原玉幸子
24
『トルコ』の内藤正典先生のイスラム教の解説の本書は(前書岩波新書と幻冬舎新書で難易を書き分けた訳ではないでしょうが)語り掛ける文調なので優しい。イスラム教やモスリムに就いての新書解説書を何冊か読んできた身から言えば、目新しい事項はないので、「はぁ、そうですか」ですが、今の今は、イスラエルのガザ地区攻撃を取り上げるべきでした(イスラム教の概説は緊急出版する題材ではないので難しいですが)。日本は、即時停戦の国連決議を棄権すべきではなかったと強く思います。(◎2023年・冬)2023/12/05
紙狸
18
2023年7月刊行。ハマスとイスラエルの戦争が始まる前だ。21世紀に入りイスラム過激派によるテロが繰り返されたことから、欧米とイスラムの分断は深刻化した。著者内藤正典氏は、トルコの専門家であり、欧州におけるイスラムについても詳しい。この本では、欧米の政治家やマスコミが拡散しているイスラムに関する偏見をひとつひとつ正している。さらに内藤氏が長年のムスリムとの付き合いの中で発見したイスラムの特徴を分かりやすく書く。イスラムは人間の欲望を肯定する。人間の内面を問題視するのではなくて行動を重視する。2024/10/21
ポチポチ
5
僕はイスラム教を知らないけれど、キリスト教や仏教のように信徒の数は世界的に多い、日本にも多くのムスリムが住んでいるであろう中、印象としては一部の過激派組織の存在感が大きすぎてイマイチ掴めない。この本は一方的な先入観を少し取り去ってくれたように思う。アッラーとムハンマド、教典と教義。排他的というよりはお好きにどうぞというスタンスなのだろうか。歴史と宗教は切って離せない。今起きている時事の文脈が分かるようになりたいものです。【Audiobook聴き放題】2024/10/06
mochiomochi
5
著者の講義を学生時代に取っていたことがある。もう15年くらい前の話だが、当時は中東全般に国際論を教える教養科目の先生をなさっていた。講義内容がとても面白くて、いつか著者の本を読んでみたいと思いつつ、時が流れた。 「分断」というキーワードにより、ムスリムの思考回路を平易に、わかりやすく説明していて、新書なのにすぐに読むことができた。個人的には、ムスリム世界を国際政治学者として、一市民として触れてきた著者の価値観による内容と思う。偏向的に感じる人もいるかもしれないが、私個人は面白かった。2024/03/08
お抹茶
5
著者の本は多いが,著者が考えるイスラムと西欧の埋めがたい価値観の違いがよく整理されていて読みやすい本だと思う。コロナ禍やウクライナ侵攻も含める。宗教や民族のアイデンティティを強調して戦争を繰り返したのがヨーロッパで,相手を一括りにして優劣をつけようとするが,イスラムには人間社会の内部に敵=原因者を求めたり優劣をつけたりする発想がない。宗教から離れることを進歩だと捉える西欧は,イスラムを遅れていて差別感情を抱く。イスラム道徳に基づいたエルドアン政権の行動もわかる。西欧による批判を丸呑みする危険性に気づける。2024/01/03