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内容説明
21世紀に入り欧米諸国にとって最大の脅威はイスラム勢力だった。だが、欧米がイスラムを理解せず、自分たちの価値観を押しつけようとしたことが、対立をより深刻にしたのは否めない。1400年前に誕生し、いまだに「生きる知恵の体系」として力を持ち、信者を増やし続ける宗教・イスラム。その教えの強さはどこにあるのか。暴力的・自由がない・人権を認めない等、欧米が抱くイメージはなぜ生まれ、どこが間違っているのか。世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代の、必須教養としてのイスラム入門。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
原玉幸子
23
『トルコ』の内藤正典先生のイスラム教の解説の本書は(前書岩波新書と幻冬舎新書で難易を書き分けた訳ではないでしょうが)語り掛ける文調なので優しい。イスラム教やモスリムに就いての新書解説書を何冊か読んできた身から言えば、目新しい事項はないので、「はぁ、そうですか」ですが、今の今は、イスラエルのガザ地区攻撃を取り上げるべきでした(イスラム教の概説は緊急出版する題材ではないので難しいですが)。日本は、即時停戦の国連決議を棄権すべきではなかったと強く思います。(◎2023年・冬)2023/12/05
mochiomochi
4
著者の講義を学生時代に取っていたことがある。もう15年くらい前の話だが、当時は中東全般に国際論を教える教養科目の先生をなさっていた。講義内容がとても面白くて、いつか著者の本を読んでみたいと思いつつ、時が流れた。 「分断」というキーワードにより、ムスリムの思考回路を平易に、わかりやすく説明していて、新書なのにすぐに読むことができた。個人的には、ムスリム世界を国際政治学者として、一市民として触れてきた著者の価値観による内容と思う。偏向的に感じる人もいるかもしれないが、私個人は面白かった。2024/03/08
お抹茶
4
著者の本は多いが,著者が考えるイスラムと西欧の埋めがたい価値観の違いがよく整理されていて読みやすい本だと思う。コロナ禍やウクライナ侵攻も含める。宗教や民族のアイデンティティを強調して戦争を繰り返したのがヨーロッパで,相手を一括りにして優劣をつけようとするが,イスラムには人間社会の内部に敵=原因者を求めたり優劣をつけたりする発想がない。宗教から離れることを進歩だと捉える西欧は,イスラムを遅れていて差別感情を抱く。イスラム道徳に基づいたエルドアン政権の行動もわかる。西欧による批判を丸呑みする危険性に気づける。2024/01/03
TorysGirly
4
イスラム教やその世界に住む人々の考え方を知る最初の一歩としてはとても良かったように思う。西洋文明は自分たちの規範を押し付けすぎていて、他人の内面にまで踏み込まない・試そうとしないあり方が、分断を避けるのではないか。そうした結果が近頃のイスラム諸国の融和につながっている可能性。かなり個人的な視点に思える事もあるが、基本欧米社会からの論点で接する話題を逆側からみるとなるほどこうなるのかという事も多かった。もう少しいろんな本をよんでみよう。2023/10/20
馬咲
4
欧米的価値観とイスラム的価値観のパラダイムの根本的な違いを、自分の中でもう少し具体的にイメージできた。日本においても主に欧米側の文脈から伝えられるイスラム世界像を捉え直し、複眼的な視点を持つ足掛かりとして良いと思う。ムスリムも自由や民主主義、人権といった理念を頭から拒絶するわけではない。しかしそれらはさらにコーランやハディースの記述によって吟味されなければならず、それ自体で基底的規範とはなり得ない。この認識からスタートしないと、乗り越えるべき分断の溝の幅と深さをこれまでの欧米諸国同様に見誤ってしまう。2023/09/06