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内容説明
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著になっている。日本企業は、買価が安く、購買量が少なく、スピードも遅いのに、過剰に高品質を要求するのが原因。過去の成功体験を引きずるうちに、日本企業は客にするメリットのない存在になったのだ。調達のスペシャリストが目撃した絶望的なモノ不足と現場の悲鳴。生々しい事例とともに、機能不全に陥った日本企業の惨状を暴く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
123
コロナを契機に我が国が見舞われたのは「品不足」ではなく「買い負け」だった。半導体、木材、海運、LNG、食料、労働力…有事において「何でもやった」他国に対し、日本企業の緩慢さが具体的に指摘されている。この国を高度成長に導いた、仕入れの多層構造・品質第一主義・全員納得主義という日本企業の特性が、構造的欠陥として逆作用している。これに対して、著者は示唆に富んだ提言を示しているが、ただ、本質が、モノ作りから価値作りに移行できない日本産業の没落(買う力の低下)にあるとすると、小手先の処方箋では役に立たない気がする。2023/09/14
たまきら
58
建築現場監督をしている元教え子から聞いた「圧倒的に人も資材も足りない」という言葉。あれは一昨年だ。「半導体政策は大失敗だよ」と休みなく半導体製造に関わっている友人が言ったのは5年以上前のこと。そして築地の初競りでマグロを香港の会社が落としたのは20年近く前だ。兆候はあった。けれども気づかないふりをし続けた結果、今私たちは買いたたかれている。不動産も、山も、水源も。国立公園まで開発されてしまいそうだ。だから、創造性が鍵だと信じている。私たちにはできるはずだ。2024/08/05
HMax
41
どういう人がこの本を読むのか分からないが、多くの人、特に経営者と政治家に読んで欲しい。「決断プロセスが遅く、購入量も減少し、過剰なサービスを要求し、変更は認めない、こんな日本に売りたい企業などない」。うちの会社でも良く聞く話が山ほどでてきて苦笑い。「俺は聞いていない」を防ぐために増殖するWeb会議。新しい設備の導入提案に、「他社は導入しているのか?」、導入してからでは遅いでしょ!! 2024/10/11
こも 旧柏バカ一代
27
世界的に物流が滞り、物資は不足し、価格も上がって行っている。近隣国はそれに早急に対応するのだが、、日本企業のはかつて強かった経済の幻想に踊らされ。日本経済全体の凋落を感じず、日本円が弱くなってる状況下で、過剰な品質要求を他国の業者にし、返答や問い合わせに対して決断が遅く。それらが、日本企業が「買い負け」する原因となっているらしい。知らんけど。2024/02/07
メタボン
27
☆☆☆☆ 日本の現在の窮状について鋭く論じた良書。背景にコンサルティングで得られた数々の実体験があるのだろう。品質にこだわるがゆえに注文が多い、事なかれ主義で決断が遅い、こういった日本の習慣が嫌気されて、ますます買い負ける状況になっている。半導体を売ってもらえない、木材を売ってもらえない、貿易船によってもらえない、そして食料をうってもらえない。失われた30年と言うが、このままでは日本そのものが失われることにならないか。交渉にあたり「結果ではなく手法と結果幅の合意を」というのは同感。2023/12/19