追いついた近代 消えた近代 - 戦後日本の自己像と教育

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追いついた近代 消えた近代 - 戦後日本の自己像と教育

  • 著者名:苅谷剛彦
  • 価格 ¥3,850(本体¥3,500)
  • 岩波書店(2023/08発売)
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  • ISBN:9784000613620

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内容説明

西欧に追いつき,追い越す――.明治以降の近代化と敗戦を経て,1980年代に「追いつき型近代」を達成した日本は,どのような自己像をもち,社会の変化に対応しようとしてきたのか.本書では教育政策を過去と未来をつなぐ結節点ととらえ,政策文書や知識人・研究者の言説を繙き,現在につづく問題群の原点を抉り出す.著者渡欧以降10年来の力を注いだ意欲作.

目次

プロローグ 消えた近代
第一章 「近代化論」―― その受容と変容
はじめに
一 近代化論の骨格
二 箱根会議に見る視点の対立軸
三 自然成長的近代化と目的意識的・選択的近代化 ―― キャッチアップ型近代化への道
四 もう一つの目的意識的・選択的近代化の受容
第二章 「追いつき型近代」の認識
はじめに
一 政策言説の分析方法と補助線となる理論枠組み
二 大平政策研究会の認識
三 大平政策研究会の位置づけ
四 「それ以前」の近代(化)理解
おわりに
第三章 臨時教育審議会の近代
一 なぜ「教育」政策言説なのか
二 「近代化と教育」再考
三 臨時教育審議会の認識 ―― 「追いつき型近代化と教育」の認定
四 香山健一の近代化理解
五 香山の近代理解と臨教審
結論
第三章補論 日本型福祉社会論とキャッチアップ型近代の終焉
第四章 高等教育政策 ―― 二〇〇〇年代の迷走
一 高等教育のパラドクス
二 焦眉の急 ―― グローバル化への対応の遅れ
三 「変化への対応」という問題
四 「社会と大学の断絶・齟齬」説の原型
五 「社会の変化」の変節
六 新自由主義と小さな政府
結論
第五章 教育研究言説の「近代」
はじめに
一 「逆コース」の時間差
二 問題構築の原点 ―― 文部省『新教育指針』(一九四六‐四七)
三 「逆コース」に見る対立軸と戦後の近代(化)理解 ―― 教育基本法をめぐる攻防
四 国家と公教育 ―― 古くて新しい近代の問題
五 キャッチアップ一度目の到達点とその後
第六章 経済と教育の「近代」
はじめに
一 能力主義的教育批判に見る経済と教育の結合
二 経済審議会答申の「近代」
三 学歴社会・受験教育の「近代」 ―― 能力主義的教育の読み換え
四 後発型近代(化)の経験と後発効果の「近代」
第七章 外在する「近代」の消失と日本の迷走
一 日本人は優れているか
二 「産業化・経済に照準した近代(化)理解」の問題
三 外在する「近代」の実体化
四 欠如する「主体(性)」の変節(「その後」の問題一)
五 「エセ演繹型の政策思考」と主体(性)の空転(「その後」の問題二)
六 呼び込まれる外部の参照点
エピローグ 内部の参照点を呼び覚ます ―― 交錯する近代の視点
一 エセ演繹型から帰納的思考へ
二 生活者 ―― 「弱い個人」の主体
三 交錯する外部と内部の参照点
既出関連文献
引用文献
関連年表
事項索引・人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おさむ

35
西欧に追いつけ追い越せで、近代化を達成した日本。しかし、1980年代初頭にピークをつけてからは、目標となるモデルがなく、今に至るまで漂流を続けている。近代化の終焉意識は結果として、新自由主義を蔓延させ、営利企業を教育の場に参入させただけに終わっている。全く持ってその通りだと思うが、いわゆる通説と何ら変わらぬ結論。期待していただけに、読むのに疲れた割に得るものは少ない本でした。追記:第74回毎日出版文化賞[人文・社会部門]2020/03/15

鵜殿篤

3
著者が本文で断っているように、本書は「言説分析」に終始している。空中戦だ。著者ご本人は教育社会学者として「地上戦(つまり実態分析)」でたくさんの成果を挙げてきた。しかし本書で空中戦に挑むのは、せっかく地上戦で戦果を挙げても、空中戦で全て台無しにされてしまうというふうに、何度も煮え湯を飲まされてきたからなのだろう。本書でも、社会学者の着実な業績を台無しにし続ける官僚=東大法学部に対する恨み辛みが垣間見えるところである。著者は東大法学部に特有の思考様式を分析した上で、それを「エセ演繹思考」と切って捨てる。2020/04/06

すーさん

3
敗戦後、自信を喪失した日本の教育は、西欧の経済に追い付くべく、目標を立てる。高度経済成長を成し遂げた後、モデルを失った日本の教育は個性や自主性が盛んに言われるようになった(これは経済大国になってしまい目標を自分で見つける必要が出てきたことによる)。 経済復興を成し遂げ自信を回復した日本は、目標を探し求めた挙げ句やがてナショナリズムと結び付き、現在ではそうした性格も帯びてきている。という感じの内容。論証もしっかりした研究書。 政教分離といいながら、教育は政治や経済の目的に利用されてきたことがよくわかる。2020/01/03

ノコギリクワガタ

1
近代や近代化についての定義付けとその意味や影響の拡がりを論じて一冊の本にし得るだけでもすごい。2020/01/20

Sensyuraku

0
戦後日本の自己像と教育』具体的な指導要領とかの話は少なめ。メインは近代という概念が教育政策の中でどう認識されてきたか。面白いのは、ぐっだぐだの教育改革の根底にある「西洋に追いつこうとする政策は一応の完成を見た」「今や目標のない時代である」「主体的な学びが足りない」「グローバルな視点が足りない」というような言明の根拠が特になくて、ふわっとした印象論だけでずーっと語られてきたっていう指摘。2021/09/09

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