ちくま学芸文庫<br> 責任と判断

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ちくま学芸文庫
責任と判断

  • ISBN:9784480097453

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内容説明

「歯車理論」や「小物理論」の虚偽を突き、第三帝国下の殺戮における個人の責任を問う「独裁体制のもとでの個人の責任」、アウシュヴィッツ後の倫理を検討し、その道徳論を詳らかにする講義録「道徳のいくつかの問題」など、ハンナ・アレント後期の未刊行論文集。ユダヤ人である自らの体験を通して全体主義を分析し、20世紀の道徳思想の伝統がいかに破壊されたかをたどる。一方、人間の責任の意味と判断の能力について考察し、考える能力の喪失により生まれる“凡庸な悪”を明らかにする。判断の基準が失われた現代こそ、アレントを読むときだ。

目次

プロローグ(ソニング賞受賞スピーチ) 一九七五年/第一部 責任/独裁体制のもとでの個人の責任 一九六四年/道徳哲学のいくつかの問題 一九六五─六六年/アレントの『基本的な道徳命題』の異稿/集団責任 一九六八年/思考と道徳の問題──W・H・オーデンに捧げる 一九七一年/第二部 判断/リトルロックについて考える 一九五九年/『神の代理人』──沈黙による罪? 一九六四年/裁かれるアウシュヴィッツ 一九六六年/身からでたさび 一九七五年/解説 ジェローム・コーン/テクストについて/訳者あとがき 中山 元/文庫版への訳者あとがき 中山 元

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

47
2003年初出。道徳の問題が発生するのは、強制的同一化(ナチスが権力掌握後に採用した政策で、政治や社会全体を均質化することを志向、080頁注〔7〕)の現象が発生したから(042頁)。道徳的な規則や基準を示すために、ラテン語の語源[モーレース]に由来する道徳性(モラリティ)と、ギリシア語の語源[エートス]に由来する倫理(エシックス)を使ったが、道徳がたんなる慣例や習慣を意味するにすぎないことが明らかになるとは、奇妙で、恐ろしいこと(085頁)。徳とはなんらかの訓練や教育の結果として生まれる(125頁)。2016/10/08

テツ

25
「個人」の責任。「集団」の責任。古来より人は群れを成すと群れの熱さと香りに酔い暴走しがちだけれど、それが取り返しのつかない愚行であったと明らかになってもその集団を構成している個人個人の罪悪感は限りなく薄く、反省するきもちも持ち得ない。自分の行いを、言動を思考を忘れないこと。事あるごとにその是非を自らに問うという苦しみから決して逃げないこと。その苦しみを万人が受け入れたときに初めて群れが暴走しなくなる(する前に待ったがかかる)世界が完成するのかな。思考停止と意図的な忘却は邪悪と言ってもいい。2018/08/14

おおた

21
会社で売上が下がっても誰も責任を問われず、むしろ制作側が怒られていることがあった。政治だって「失われたX年」なんて言われるけど、別に誰かが辞任するわけでも給与を返却するわけでもない。「赤信号みんなで渡ればこわくない」という無責任の精神は笑っていられるうちはいいけれども、容易に悪事に発達する。自らが悪に転向する可能性を常に恐れながら、個人として何に荷担しているのか、本書を読みながら生きている間ずっと考え続けていきたい。Twitterの噂一つでさえ大きな動きを作り出す時代だから、考えるのをやめてはいけない。2018/08/05

シャーリー

16
哲学は初心者なので、必死について行った。内容が全て理解できた訳ではないけれど、アレントの言う歯車という言葉が印象的だった。この考え方は日本人の同調圧力という巨大な権力というか、暗黙の了解みたいな国民性をディスるのにとても良い。みんな読むべきである。2022/08/18

Ex libris 毒餃子

16
アレントのスピーチなど含む短編集。他の著作と比較すると、読みやすいので案外、最初に読むにはちょうど良いかも。時事問題や後期のカント哲学の関連を感じるものもあって、思想的に網羅されている。2021/08/03

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