ちくま学芸文庫<br> メディアの生成 ――アメリカ・ラジオの動態史

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ちくま学芸文庫
メディアの生成 ――アメリカ・ラジオの動態史

  • 著者名:水越伸【著者】
  • 価格 ¥1,430(本体¥1,300)
  • 筑摩書房(2023/07発売)
  • ポイント 13pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480511669

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内容説明

メディアの近未来を予測するとき、ラジオの歴史から学ぶことは多い。20世紀が幕を開けた頃、電波を用いたコミュニケーション領域=無線は、最新のニュー・メディアだった。そこから徐々にラジオ放送が産業として編成され、マス・メディアとして確立し、日々絶え間なく放送される番組が人々の生活文化を形成していくことになる。本書は20世紀初頭から半ばまでのアメリカにおけるラジオの動向を通じ、メディアが経験した地殻変動や、近代社会における文化の諸相に迫る。インターネット登場前夜に書かれた名著に、新章を増補した待望の文庫版。

目次

序章 メディア史の構図/メディアの地殻変動/ラジオ放送の誕生の場へ/テクノロジー・メディア・社会/本書の構成/第I章 無線想像力と産業的編制/1 夢としてのテレ・コミュニケーション/声のテクノロジー/視話法とテレフォン/プレジャー・テレフォン/エレクトリック・メディアの時代/2 エーテルを渡る声/電気の時代とエーテルの理論/ラジオの発明家たち/無線想像力と「ラジオ・ミュージック・ボックス」/3 ビッグビジネスとナショナリズム/ラジオ無線と第一次世界大戦/国有化構想とRCAの設立/RCAと相互特許協定の成立/消費財産業の発達/第II章 ラジオをめぐる心象/1 KDKA──無線から放送へ/フランク・コンラッドと仲間たち/販売促進媒体としてのラジオ/大衆=リスナーの発見/放送への対応/2 ガレージからリビングへ/ラジオへの憧憬と神秘感/ガレージからリビングへ/マニアからマス(大衆)へ/3 マス・メディアのジャズ・エイジ/繁栄のバンドワゴン/大量生産・大量消費の時代/マス・メディアが造成する情報環境/4 ラジオ・ブーム!/ラジオ、家電となる/家具を装うラジオ/初期のラジオ番組/マス・メディアとナショナル・イベント/第III章 混沌から秩序へ/1 ラジオは電話である──AT&T、ラジオへ進出す/ラジオとはなにか/「有料放送」の発明/WEAFの開局と「チェーン放送」のはじまり/無線電話からラジオへ/2 山分けのやりなおし──「一九二六年相互特許協定」の成立/テレフォン・グループ対ラジオ・グループ/AT&Tの撤退/NBCの誕生/ラジオ、産業となる/3 混信とパブリック・インタレスト──全米無線会議の展開/ラジオが聴きにくくなってきた/全米無線会議の招集/パブリック・インタレストとはなにか/4 「一九二七年無線法」とFRCの発足/「一九二七年無線法」の成立/「くらげのような委員会」/制度的規律と産業的発達/第IV章 大恐慌による放送産業の確立/1 「暗黒の木曜日」とRCAの台頭/繁栄のバンドワゴン/小春日和の崩壊/RCA、ヘゲモニーを握る/ラジオが受けたインパクト/2 さまざまな可能性/ラジオに魅入られた人々/「誰が、いかにして支払うべきか」/見えない受け手たち/3 「コマーシャル放送」の展開/アメリカの広告/時間を売ります/有料無線電話からコマーシャル・ラジオ放送へ/4 サーノフとペイリー/ネットワークの始原「チェーン放送」/サーノフとNBC/ペイリーとCBS/その他の可能性/5 ネットワークの勃興/ネットワーク加盟契約/CBSの加盟契約/寡占市場の形成/第V章 エーテルの劇場化──番組という文化の形成/1 日々の楽しみたち/ラジオの黄金の日々/インダストリアル・デザインされたラジオ/聴き手たち──「二次的な声の文化」/2 番組という文化コード/「明日、また同じチャンネルで」/ベニー・グッドマンとバッハ/バラエティとソープ・オペラ/エド・マローと放送ジャーナリズムの形成/3 スポンサーの定着/ラジオ広告の発達/スポンサーと広告代理店/第VI章 テレビジョンの到来/1 「テレ+ビジョン」の徴候/電気、テレ・コミュニケーション、テレビジョン/協同する発明家たち/2 テレビジョン標準化をめぐる攻防/テレビジョンを疎外したラジオ/「ラジオ・シティ」はテレビジョンのために/NTSCの成立/3 ラジオからテレビジョンへ/揺籃期と戦争/テレビジョンもコマーシャルになった/ラジオ、ハリウッド、テレビジョン/小窓のついたラジオ/ラジオとテレビジョン/終章 再帰──テクノロジー・メディア・社会/ラジオ・マニアからマイコン・マニアへ/ニュー・メディアは古くからある/移植された日本のメディア/メディアの政治経済的特性/想像力の隠蔽/揺らぎとメディア論の覚醒/連関から融合へ/メディアの生成/註/あとがき/数表/放送メディアの形成をめぐる年表/写真・図版の出所一覧/参考文献/文庫版のための補論

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

モルテン

9
アメリカにおいて、ラジオ放送やラジオ受信はどのように形作られていったのか。その歴史を追う本である。多くの根拠資料に当たり分析されているので論が強く、射程が広い。もとは1987年の修士論文が1993年に出版された本とのことで、インターネットが普及する前なのに、読んでいてインターネットやスマホにまで敷衍できる。それにしてもラジオは面白いものだとしみじみしながら読んだ。特に、ラジオが発明された時期は、その「使い道」が定まっておらず、電話との差異も分かっていなかった点はワクワクした。2023/06/28

ぷほは

5
「本当に文庫化してもらえて感謝しかないメディア論の本21世紀ランキング」で上位5本には必ず挙がってくることが2024年時点で確定している。米ラジオ業界話?なにそれおいしいの?という視点をローリングトゥウェンティーズのデンプシー・ロールよろしくタコ殴りにしてくれる。リングの殺し屋の熱狂で当時のラジオリスナーの何人かは心臓停止によって亡くなったが、90年代原著刊行当時のパソコン少年から2020年代のAI自動生成Vtuberまでが等しくぶっ飛ばされる、「まき散らされるbroadcast」情報の社会的編成に驚嘆。2024/10/20

バーニング

4
ラジオリスナーは全員読んだほうがいい(絶対面白いから)と素朴に思った。ラジオというメディアはどのように誕生、発展したのか。今のような仕組み(定時に決まった番組を流すプログラム方式や、経営安定化のためのスポンサー方式)は約100年前にすでに形として出来上がりつつあったことや、いくつかの意図せざる帰結も重なったことなど、読んでいて楽しかった。著者も文庫版あとがきで触れているがインターネットが一般に流通する直前に書かれたことも重要かも。インターネットという大きなメディアの存在を取り除くことができているので。2023/04/03

Rick‘s cafe

1
Video killed the radio star.とはよく言ったものであるが、そんなに簡単なものだろうか。テレビの前史として片付けられてしまいがちなマスメディアとしてのラジオにも、その発生と普及の過程がある。そもそもがブロードキャストを想定して作られたものどころか、無線技術の発展の中で通信技術として期待されていた。そのラジオが政治経済的動態の中でメディアとして確立していく様を心性史などと結びつけながら描き出す。ポッドキャスト等の音声メディアが全盛期となっている今現在においても、非常に示唆的で面白い。2023/04/14

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