内容説明
私の罪を裁いて欲しかったーー。
警察でも、裁判所でもなく、あなたの手で。 「ある罪」によって繋がった仲間たちを描いた慟哭の長編ミステリー。
世の中のはみだし者の幼馴染み3人は、十五年後の再会を約束する。
かつてやり残した「宿題」を終わらせるために。
商社に勤める結城隼は、ロンドンへの勤務を命じられる。
東京での最後の出社日、送別会もなくまっすぐ家に帰ると玄関でひとりの少女が待っていた。
中学卒業以来一度も会っていない、幼馴染の娘だった。
彼女の頼みは、行方不明になった母親を探すこと。
タイムリミットは、ロンドンへ旅立つまでの五日間。
少女と共に、故郷である神戸に向かうがーー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
155
ちょいと期待しすぎたか・・(こんな時もある)15年後の約束が結局28年後に果たされる男女3人の物語。引っ張りすぎの感があって、その都度私はグルングルン振り回されるのだけれど、裁くとか裁かれるとか何となく・・何となく「はぁ・・」なのだ。はみだし者と言う定義はどこから?誰が定着させたのだろう。子供の世界は残酷な一面を持っているよね。だけど、だからこそのかけがえのない命がけの友人関係もあるのだ。こんな狭い国の中で、それはこれからも変わらないのだろうと、そんなことを思った。2023/08/08
パトラッシュ
137
素人が制限時間内に事件を解決せねばならない物語はアイリッシュの得意な手法だが、これに少年時代の固い友情と約束を交えることでサスペンスに満ちたハードボイルドが展開する。正統派の捜査や論理的謎解きはほとんどなく、主人公の結城が幼馴染の女を探して神戸の裏の世界を駆け回るドラマがメーンとなる。様々な人と出会い、自分の知らなかった28年間の状況が明らかになるにつれて、小器用に生きる術を学んでいた結城は青春を取り戻していく。生きるために罪を犯さざるを得なくても、若い日の友情は絶対に信じられると確信するラストは美しい。2023/11/30
しんたろー
134
伊兼さんの新作は、40代の商社マン・結城を主人公に親友のニナとジョンホ3人の物語。ニナの娘・ジーナが「母が失踪したので一緒に探して欲しい」と頼まれることから始まる…舞台である神戸の情景や香りが詳細に描かれていて、そこに彼らの青春が重なり合って目に浮かぶ。著者らしい人物造形の良さと、敵味方が二転三転する展開で飽きずに読めた。とは言え、これまでの優秀な作品群からすると後半の伏線回収や結末の付け方に物足りなさを感じた。著者なりの新しい試みは評価するが、期待が大きかっただけに、それは次作へ持ち越しといったところ。2023/09/16
ゆみねこ
80
在日外国人のニナとジョンホ、父の犯した罪で転校を繰り返す隼。はみだし者の3人が交わした約束。隼のもとに中学卒業以来会っていなかったニナの15歳の娘・ジーナが突然現れ、ニナの行方を探してくれと言う。タイムリミットは隼がロンドンへ赴任するまでの5日間。神戸を舞台に過去と向き合う隼とジョンホ。うーん、それなりに面白かったんだけど、伊兼さんのこれまでの作風とちょっと違う感じ。2023/08/09
ゆのん
63
5日後に海外転勤をする主人公の元に中学時代の親友の娘が現れた。行方不明の母を探して欲しい…。行き先は神戸。親友を探すうちにもっと大きな何かに関わってしまう。中学時代の約束、同級生の死、失踪した少女の母、親友への疑惑などなど、主人公は一体何処へ向かっているのか。何に巻き込まれているのか。中学時代に差別を受けた3人。その辛い状況が絆を強くしたのだろう。親友を大切に思う気持ちがものすごく伝わってくる。裏社会も垣間見れ、緊張感のある場面がとても良かった。2023/10/11