内容説明
四十余年前，東京はアメリカ軍の爆撃で全市街の半分以上が焼け，十何万人もの人命が失われました．他の主だった都市も同様に爆撃を受けました．当時，中学生だった早乙女さんは，恐ろしかった空襲の夜を想い起こし，克明に資料を集め，生き残った人々の話を聴きなどして，東京が燃えた日々をくわしく再現しました．
目次
第一章 最初の敵機
はじめての東京空襲 その日の私 「敵機が見える」 石出巳之助君の死 撃墜したのはクウキのみ 初空襲がもたらしたもの
第二章 少国民と神風
防空・防火義務の徹底 横丁の防空演習 大和魂でたたかえ！ はく製になった猛獣たち
第三章 学童勤労報国隊
サイパン島が敵の手に 学童疎開と勤労動員 Ｂ29を見た 心細い迎撃体制 ひんぱんになった本土爆撃 お年玉は焼夷弾
第四章 炎の夜・三月一〇日
「勝元、起きろ」 炎のるつぼに 私が見たもの 東川豊子さんの記録 「敦子よ、涼子よ、輝一よ」 「川は死体のたまり場じゃった」 一〇万人が一晩で死んだ
第五章 無差別爆撃命令書
その後の東京空襲 「必勝の信念をもって最後まで」 重なる軍部のミス アメリカ軍の爆撃計画 「戦術作戦任務報告」から ルメー将軍への贈り物
さいごにひとこと
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
35
全く理解できない。14歳の中学生を戦闘機から機銃掃射し殺害など、何かの間違いであって欲しい。悪魔以外の何者でもない。情けない。英語でないドレミを敵性語などと言い使用禁止。若き頃、漫画で読んで知っていたが、戦争の為殺害された上野動物園の動物たち。カーチス・ルメイ司令官が戦後日本から勲章を授かっている事は承知しているが、ここに佐藤栄作首相の答弁がある。「日本の自衛隊建設に非常に功労があったから」と。全く理解できない。なんだったんだ。この戦争は？！児童文学作家、東京大空襲・戦災資料センター名誉館長、79年著。2019/10/04
Willie the Wildcat
34
戦闘員vs.非戦闘員、消火vs.避難、報道vs.現実などの矛盾が散見。極め付けが、ルメー将軍の『勲一等旭日大綬章』！？時勢が思考を停止させる中、如何に（他者ではなく）自身の軸を問うか。逃げ道のなくなる壮絶な最期。親子・家族故の想いや願いの分だけ、極限の悲哀と悔恨が募る。戦争というボタンを押す権力を持つ方々に、今一度戦争の齎す現実を見つめて欲しいと感じる。2014/10/28
かおりんご
28
児童書。昔の本だけあって、かなり内容がハードでした。取り上げられている写真もグロテスクだし、内容もストレート。事実を正確に伝えていると言われたら、そうなのだけど、今の子には耐性がないから読みづらいんじゃないかと思いました。戦争を2度と繰り返してはいけない。そんな気持ちにさせます。2020/03/05
とみやん📖
9
今年の５月10日にお亡くなりになった、早乙女勝元さんの本。以前に別の本を読んでいて、とても気になっていた。東京大空襲の凄惨さを生涯かけて世に広める努力をされた方。岩波ジュニア新書だけにとても読みやすい。 先日、半藤利一さんの本を読んだばかりだったせいか、米軍の残忍さ以上に、日本の軍部や学校の先生らの精神論や空疎な掛け声などが本当に情けなく感じる。図解が分かりやすく、B29と海軍の零戦とのサイズの違いたるや、暗然としてくる。迎え撃つ、銃後の人たちは、老人や女性や子供ばかりで、竹の武器や防護着とは。2022/08/13
gollum
4
この時期に読み返す本のひとつ。なぜか初版が書架にある。著者の中学生時代の体験と視点から描かれた「三月十日」は凄絶の一語につきる。2009/08/09
