内容説明
ジョージ・オーウェルが「傑出した小説」と絶賛。75年ぶりに発見されたドイツ語原本からの初翻訳。
かつて革命の英雄であった主人公ルバショウは、絶対的な権力者「ナンバー・ワン」による粛清の標的にされ、でっち上げられた容疑で逮捕・投獄される。隣の独房の囚人と壁を叩いた音によって会話を交わし、これまでの半生を追想するうちに、革命家としての自分の行動の正当性に対する確信が揺らぎ始める。取り調べを受ける中でルバショウは、でっち上げられたグロテスクな罪を自らの意志で自白していく。
アンチ・ユートピア小説であり、ザミャーチンの『われら』、ハクスレーの『うるわしき新世界』、オーウェルの『一九八四年』、そしてブラッドベリの『華氏四五一度』と比較し得る。残念なことに、これらはいずれも、今日に至るまでその現実性を少しも失っていない二十世紀からの警告の声である。(ドイツ語版序文、マイケル・スキャメル)
スターリン専制下のソビエト連邦で一九三〇年代後半に行われたモスクワ裁判の犠牲者をモデルとした政治小説である。それと同時に、ドストエフスキーの『罪と罰』や『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』の系譜を受け継ぎ、政治と倫理の問題をめぐる議論の交わされる観念小説でもある。さらには、全体主義的な体制下の監獄で、一人で戦わねばならなかった孤独な人間の心の動きを丹念に追ったサスペンスタッチの心理小説でもある。(「訳者あとがき」より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
20
スターリン時代のソ連の見せしめ裁判をモデルにした小説。いかにも怖そう暗そうと想像していが、けっこうひきつけられた。ベルリンやラトヴィアのリガで見学した秘密警察の拘置所を思い浮かべながら読んだ。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/33599516/2023/12/17
チェアー
5
自国の主義を守るため、すべての人間を犠牲にした。主義は人間に優先され、思想と偶像が掲げられ、生身の人間はそれらにひれ伏した。 で、これは今の話?2023/08/09
lico
3
スターリン時代の粛清裁判を下敷きに、無実の罪で裁かれる主人公・ルバショウの心の内を描いた心理小説。従来は『真昼の暗黒』という題名で知られる作品で、岩波文庫版の訳者あとがきにもある『全て失われてしまった』ドイツ語原稿が2015年に再発見されたためこのたび翻訳が行われた。前回読んだ時と比べて、共産主義の歴史には詳しくなり、ロズニツァの『粛清裁判』を観たこともあり、より当時の感覚に近い形で読むことができ臨場感が増したと感じた。注釈も多くかなり読みやすい(全く注釈のない岩波文庫版と比べるとかなり親切である)。2023/07/08
putisiyante
0
電子書籍。絶賛する文が目にとまり読むことに。革命家としての主人公の心の動きを、狭い、暗い、自由がない、隣の独房の囚人と壁を叩く会話の音だけで、表している。時代背景や著者のことが映画や本だけの知識だけでは、読んでいく上で想像がつかない。そのもどかしさが、主人公の自分探しと重なって、「ストックホルム症候群」、生身の人間がないと感じた。2025/03/30
アシモ
0
今年1番の小説かもしれない。重たいテーマを彫り込むような鋭い描写。スリリングなエンターテイメント性も持ち合わせ一気に読ませた。注釈や解説にはとても助けられた。それでも読解力不足でちびのレーヴィの死の原因が今ひとつわからなかったのが悔しい。2023/12/02
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