内容説明
日本のエネルギー政策はどこに向かっているか?
ウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機を受けての「原発回帰」という政策大転換。耐用年数や核のゴミの処理といった問題から、次世代革新炉や廃炉の実現性、再び事故が起きた際の避難体制まで、20年以上にわたりエネルギー業界を取材してきたNHK解説委員らが、山積する課題を徹底解説。電気料金の高騰や逼迫したエネルギー事情が国民生活を直撃するなか、再生可能エネルギーの普及状況も含め、日本のエネルギー問題の核心に迫る。池上彰氏との特別鼎談も収載!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とくけんちょ
33
原発事故を経て、エネルギー問題にどう取り組んでいくのか。事故の後は原発ゼロ、脱原発と言っていたものの、結局のところ、世界的な約束事である脱炭素との折り合いがつかず、原発推進かいっ。そこに何があるんじゃい。と思いつつ、今の世は電力なしでは立ち行かなくなる。成長だけが全てじゃないと割り切れるかなぁ2024/12/30
特盛
8
評価3/5。のど元を過ぎれば熱さを忘れる。2023年夏に汚染水の海洋放出のニュースを見て、現状の原発政策や取り組み状況を再整理したくて手に取る。やはり廃炉への道のりはまだ道筋がついておらず簡単ではない。原発再稼働のいくつかの問題では、火山立国日本での最終処分問題や燃料リサイクルの行き詰まりが印象に残る。再生エネルギーはサンシャイン計画でかつて日本が技術をリードしたが、育っていない。まさにイノベーションのジレンマ。その他原子力村の特殊性(関係者の多さ、横並び、課題の時間軸と責任のあいまいさ)など。(続く)2023/10/25
どさんこ
4
先日、トリチウムの除去技術について、近畿大がコストの安いフィルタリング技術の特許出願をしたと言う記事を見つけた。その前にも、寺島実郎がコストはかかっても除去技術を開発推進すべきだと言う話をしていた。これに対して、国は、汚染水放出のことしか考えていない。硬直した行政と産業界の構図に失望感しか感じられない。2023/07/15
のら
3
良書。NHKの解説委員としてお馴染みの著者がエネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現という課題を前に、原発及び再生可能エネルギーの現状と課題を概観。原発は賛成反対と意見が二極化する傾向があるが、本書は努めて冷静に論を進めている。それでも本書を読む限り、原発にはあまりにも課題が多いと感じる。その課題の中でも核のごみの最終処分場が無いことは極めて重大。核のごみに含まれる放射能が安全なレベルに落ち着くまでには10万年かかる。北欧には地下深くに埋めて処理することを決めた国もあるが、地震国日本でそれが可能か。2024/07/20
お抹茶
3
NHK職員と池上彰氏による解説。取材を進めるなかでわかる“原子力村”の構造。まじめで優秀な人達でも,電力会社や国と自治体の独特の横並び意識や人事的ヒエラルキー,和を乱さない雰囲気が原発事故の遠因でもある。岩盤権益も困るが,一枚岩でないために対応策がまとまらないのも困る。再生可能エネルギーのベンチャーには,欧米に比べて日本はなかなか資金が集まらず,脱原発の確実な解決策も見えていない。日本のエネルギー問題も財政・社会保障制度問題も,誰も責任を負いたくない先送り構造は共通。原発の構造もイラストを入れながら解説。2023/09/13