内容説明
島だけが、すべてを見ていた。
1840年、気仙沼から出航した五百石船・観音丸は荒天の果てに、ある島に漂着する。そこには、青い目をした先住者たちがいた。彼らは、その地を「ボニン・アイランド」と告げた。
時を隔てた現在。すべてを失った中年男は、幼少期、祖父が大切にしていた木製の置物をふとしたことで手に入れた。それを契機に記憶が蘇る。
彼は、小笠原行きのフェリーに足を向けた。その船には、チェロケースを抱えた曰くありげな少年も同乗していた。
物語は、ゆっくりと自転を始める。
※この作品は単行本版『ボニン浄土』として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
63
知らなかった小笠原諸島の歴史と自然豊かな美しさに圧倒され、バラバラに思えたエピソードが次々繋がっていく終盤はいつもながら圧巻。宇佐美さんの真骨頂にして新境地と感じました。大変面白かったです。2024/09/29
のり
61
1840年に難波し、小笠原諸島に漂着。そこには先住者がいた。それも外国人が多数をしめた。生きる術を教わりながら、本土に帰りたい漂流者達。それも命がけの航海となる…時は現代。人生半ばにさしかかった男が、自分のルーツを辿る事に…もう一つ、天才チェロ奏者の少年の話も入り、小笠原の歴史と関わった人達の再生を描く。脈々と続いてきた血筋。大戦を乗り越えながら、日本に返還された小笠原の美しさと、人の温かみを存分に味わった。2024/04/26
オーウェン
55
大きく分けると3つの話だが、そのどれもに関わる舞台なのが小笠原諸島。 遭難で流れついた先住民や、チェロの音色を失った少年、そして自身の親のルーツを求めてやってきた者。 返還される前の小笠原諸島なので、多国籍の人間が入り乱れる島内であり、その先住民が外国名から日本名へと変換されていく。 それが名前の由来のルーツへと繋がっていく。 ボニンという初めて聞く単語だが、それが描くのは日本自体のルーツでもある。 宇佐美さんにしては新機軸のような物語であり、不思議な余韻を与えてくれた。2025/02/16
まこみん
41
以前読んで良かった一冊。遠い小笠原諸島に心馳せる。2024/09/25
かつおさん
26
“南の楽園”というイメージの”小笠原諸島”。その歴史、そこに暮らしてきた人々やその生い立ちについて何も知らなかった。江戸時代から現代に至る小笠原の歴史、風俗、人の繋がりの中で見事に紡がれた物語。どこの国にも属さず人種や身分に捉われることのなかった奇跡の島。戦争や資本主義が無垢の社会を壊していく。生い立ちの話、恒一郎のルーツ探し、賢人の癒し旅、が無理なく繋がっていく展開がいい。「マイ・ボーイ」と言って息子の頬にキスをして逝った幸乃が切な過ぎる。恒一郎も賢人もまた島を訪れたのかなぁ⁈2023/08/07
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