内容説明
寂寞たる港町・クアムを舞台に、裏社会に生きる者たちの哀切を丹念に描いた圧巻のノワール文学、上陸。
「この七百ページ超えの巨体には、物語を読むことの楽しさがみっちり詰まっている。ユーモアから憎悪まで。人間の気高さからゲスさまで。コメディからノワールまで。善から悪まで。きれいごとでは動かないこの世界の複雑性を、清濁そのまま併せ呑んで描き出したがゆえの深く忘れがたい味わい。『野獣の血』はそういう小説である。」
──霜月蒼 (ミステリ評論家)
1993年、釜山の片隅の港町クアム。万里荘ホテルの支配人ヒスは、18歳の時にクアムの裏社会を仕切るソンに拾われて以来、やくざ稼業に生きてきた。クアムは長年、海を挟んだ影島の組織と睨み合いつつ共存共栄を保っている。だがある日、組が所有する工場が流れ者のやくざヨンガンに襲撃され、平和のバランスは崩れだす。背後に影島がいるのではと疑うヒスは、やがて利権を巡る抗争に否応なく巻き込まれていき……。
映画『野獣の血』DVD好評発売中!
出演:チョン・ウ「模範家族」『偽りの隣人 ある諜報員の告白』、キム・ガプス『箪笥』、チェ・ムソン『悪魔を見た』、チ・スンヒョン『偽りの隣人 ある諜報員の告白』、イ・ホンネ「悪霊狩猟団:カウンターズ」
監督:チョン・ミョングァン / 発売:ニューセレクト株式会社
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
111
笠原和夫がヤクザ映画のシナリオではなく小説を書いたらこうなるのか。釜山の下町が舞台だが主人公ヒスを筆頭に登場人物が関西弁で喋りまくり、小さなシノギを巡り殺しや裏切りのドラマを延々繰り広げるのだから。熱風吹きつける狭い土地にしがみついて生きる彼らは、最低な政治が続いてきた韓国でも最底辺の裏社会で何とか生き抜いてきた面々であり、せこい利権を巡って抗争する以外の生き方を知らない。その不器用さが巧まざるユーモアを生み、凄惨な暴力シーンすら和らげてしまう。ノワール小説というより貧民暴力組織を描くプロレタリア文学か。2023/09/01
路地
48
暴力が当たり前に飛び交い、時には死人まで出てしまう裏社会が本作の舞台。暴力組織に属する登場人物たちが表社会の商店主たちと持ちつ持たれつといった関係をおおっぴらにもっているのはひと昔前の時代設定(1990年代)だからか。韓国のノワール、サスペンス映画と共通するような、シリアスと乾いたユーモアが同居する緩急自在の展開がくせになる。あくどくなりきれない主人公が、大きな喪失と修羅場を経験した後に、過去を振り切るかのように新たなドンになることを予感させるラストは大好きな映画『新しき世界』を思い起こさせる。2024/04/04
hikarunoir
14
映画と違い詳細なシノギの陳腐さは穏便さから。盃の概念がなく、紐帯の緩さは双方印象的。日帝~韓国現代史の残響、隠語等明かされるのが本の醍醐味。2025/03/05
しゅー
11
★★★後半だけ見ればよくあるノワールだ。しかし前半でじっくりと描かれるヤクザ稼業の日常が、関西弁で訳された会話の影響もあって魅力的である。「白い粉」ならぬ赤い粉唐辛子を中国から輸入して国産のそれと混ぜて売りさばいていたり、干物や洗濯工場の利権でもめたり、とにかくシノギがショボくて逆にリアリティあるのだ。登場する極道もカッコよさは皆無で、ところどころコメディのような面白さもある。そこをじっくり描くからこその700頁と納得した。メンツにこだわるあまり、私生活でも稼業でも不器用にしか生きられない主人公が悲しい。2024/05/21
co_taro
9
700ページ超、分厚い。でも読み終わってみれば、ヒスとインスクの行く果てをまだまだ読んでいたかったなあ~、と思わせる、そんなアウトロー小説だった。韓国南部の片田舎、プサン近辺はソウルなんかと違って、当てはめるなら大阪なの?翻訳が関西弁、それが結構しっくりくる、やくざの会話(単に極道ならば「じゃけん」でもよかった気もするけれど)。スマートにKPOPしか興味のない韓国通には無縁の世界かもしれないけれど、作者は物語で、今のリアルな韓国の底辺をさらけ出している。 2024/11/22
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