内容説明
アリストテレスの時代から不思議な生態で人々を魅了してきたウナギ。彼らはどこから来てどこへ行くのか? 今なお謎に包まれるウナギの一生を解き明かしながら、謎に挑んだ古今の学者たちの苦闘、ウナギとともに生きる漁師の暮らしぶり、幼き日の父とのウナギ釣りの思い出までを縦横に語り、生きることの意味を静かに問う。スウェーデンで最も権威のある文学賞を受賞した世界的ベストセラー。(解説・池澤夏樹)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
加納恭史
27
遠野物語の民間伝承で古代人は動物とも死者とも親近感があり、あんまり悪意が感じられず、素朴だな。それから昔読んだウナギの話を懐かしみ、この本を読む。確かウナギはアリストテレス以来の謎だったな。著者パトリック・スヴェンソンのウナギへの愛着は凄いな。ウナギはサルガッソ海で生まれ、海流に乗り、ヨーロッパかアメリカの海岸へそして川に向かう。海岸のシラスウナギは川で成長し、黄ウナギとなり更に成長して、銀ウナギになる。そして故郷のサルガッソ海に戻る。不思議な魚だが、レイチェル・カーソンも愛着し擬人化し小説を書いた。2024/04/09
鈴木拓
23
これは素晴らしい一冊に出会えた! ウナギを通して見える世界は、人間の在り方の話でもあり、著者と父ら家族の話でもある。その中に様々な社会的課題が描かれ、深く考えせられること、そして行動を促されるような気付きがたくさんあった。人間の傲慢さとウナギの辛抱強さ、果たしてどちらが生き延びるのか、あるいはどちらも滅ぶのか、あるいは共存できるのか、今考えて行動しなくてはいけないのだと理解した。あらゆる人に読んでほしい一冊だ!2023/09/16
Nao Funasoko
18
本書はアリストテレスの時代まで遡って歴史的、科学的にウナギの謎について綴っていくパートと著者とその父のウナギ釣りの思い出を情緒的に語るパートが交互に進む構成となっている。そして、単なる謎解きだけなく謎に満ちたウナギの生態を通じ、生と死や人生そのものの意味についてをも考えさせられるような見事なネイチャーライティングとして纏まっている。良書。2023/08/20
美東
17
365頁 巻末の解説 ”世界図には主観的なものと客観的なものがある。(中略)この二つは相互に補い合ってあなたの世界の全体図になる。” まさに池澤夏樹氏らしい解説である。2024/01/04
Katsuto Yoshinaga
14
文庫化を待っていたスウェーデン人ジャーナリストの手による“ウナギ・ノンフィクション”は、期待以上の面白さ。読中のワクワク感から読後の余韻まで実にイイ。アリストテレスからフロイトまで魅了した謎の生態。そしてその生態は未だ解明までは至っていない。そんなウナギ研究史とその成果やヨーロッパにおけるウナギのイメージと食について記した奇数章と、ウナギと共にあった著者の少年時代とスウェーデンの原風景を綴った偶数章からなる構成も素晴らしい。知的な面でも情的な面でも興味が尽きず、とにかく読まされ、鰻好きにはたまらない。2023/08/18