内容説明
アフリカで、中南米で、中央アジアで、ヨーロッパで……地球全土を覆いゆく、奇怪なる“譚(ものがたり)”の影!
虚栄の裏の差別、愛憎の果ての復讐……人跡あるところ、必ずや悲劇あり。帝国主義と植民地支配の未だ吹き荒れる二十世紀、世界各地で起こった異妖なる事件の数々。近代社会と人間心理の暗部を、日本文学史上破格のイマジネーションで鋭く描き続けた鬼才による、異国を舞台にした怪奇と幻想のベスト・セレクション全8篇。
好評『橘外男日本怪談集 蒲団』に続く、文庫オリジナル第二弾。
【目次】
令嬢エミーラの日記(1939)……コンゴ
聖コルソ島復讐奇譚(1937)……ベネズエラ
鬼畜の作家の告白書(1937)……アルゼンチン
マトモッソ渓谷(1939)……ボリビア
ムズターグ山(1947)……中央アジア
殺人鬼と刑事(1955)……スウェーデン
雪原に旅する男(1958)……アラスカ
人を呼ぶ湖(1951)……スイス
解説=倉野憲比古
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
66
奇譚か或いは法螺噺?異国と云うスパイスを効かせた犯罪小説か?ゴリラとの会話-今でこそ手話による意思の疎通が研究されているが…但し物語の主眼はその先進性にはなく異種の狂暴性に至るお膳立て!極端に身勝手な女性も赦されないが振り回される男の愚かしさは如何ばかりか?究極完璧なる駆け落ちは残された血筋への報復を招き異人たちの異なる価値観が不安を誘う。秘境に女連れはいけない其の一と二。今時の推理小説にもみる意外性!純朴も無知なら聖職者の純真も無知!湖の底の湖とは…紅海の底に拡がる塩分濃度を違えた海の事実に呼応する。2023/08/17
藤月はな(灯れ松明の火)
65
『蒲団』で震撼寒からしめた橘外男氏が描く海外の実話風怪談集。エログロ・ナンセンス多し。「令嬢エミーラ嬢の日記」は人心を荒廃させたジャングルの茹だるような空気と鬱蒼とした仄暗さ、悪化していく人間関係の縺れと見方に読んでいるこちらも鬱々とした気持ちになる。身の丈に合っていない不幸せな結婚生活とその末路を描いた「鬼畜の作家の告白書」のラストはまるでグランギニョルみたい。「聖コルソ島復讐奇譚」は自身の行動が周囲にどう、影響するかを考えずにやり遂げる恋人同士程、始末に負えないものはないとつくづく、思った。2023/05/23
Porco
12
語り口や舞台設定といい戦前戦後辺りの怪奇小説、それも(悪い意味ではないが)パルプフィクションらしい作品群だった。チープな点は多々見受けられたが終盤『雪原に旅する男』『人を呼ぶ湖』の2作で際立っていた描写や構成力など目を引く点もあり、こういう手合いに惹かれるカルトな作品が好きな人には堪らないだろう。2024/02/10
蛙坂須美(アサカスミ)
7
破天荒な物語に瞠目させられたかと思えば、次の瞬間には白髪三千丈の奇想のみが開陳される。いくらなんでも美女が攫われすぎ殺されすぎだろと思うし、熱に浮かされたような文体もバランスを欠き、とてもお手本にはできないが、読んでいてとにかく元気が出る。からだがポカポカしてくる。橘外男は日本舞台の怪談物しか読んだことがなかったけれど、こちらのほうが好みかもしれない。ゴリラ小説「令嬢エミーラの日記」、ちょっと映画『ウィッカーマン』あたりを髣髴させるクライマックスの狂乱が印象的な「聖コルソ島復讐奇譚」が特に気に入った。2023/03/31
ettyan えっちゃん
6
どの話も大時代的で楽しいが、なんと言っても表題作の人を呼ぶ湖が出色の出来。長い水藻に美しい女性の水死体が絡む描写とか素晴らしい。ここで終わらずに、この湖をどうするか、そこにさらに驚かされる!この結末は是非読んで確かめて欲しい2023/11/26
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