内容説明
舞台上で女優の足が、官能の道具から電話機へと変化を遂げる、そのエロチシズムへの感性を書きとめ、「リタ・ヘイワースは惜しくないけれど、ヒンドスタンを日本へ売ったのは、自分の生涯の失策だった」と、かつての夫から競走馬と比べられた女優の行く末についての考察を綴る……。
「永遠の謎と美」の存在である女性の、生き方や感受性、美意識を、映画、音楽、演劇、文芸など幅広いジャンルの作品を手がかりに読み解き、絹のように上質な文章で紡ぐ。
著者が最も健筆をふるった70年代から80年代の単行本未収録作品を集めたエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソングライン
17
人が生きるという事は、正義感や倫理感で生きているわけでなく、そこには快楽が伴っている。1970年代にスポーツ紙、競馬新聞紙に連載された作者の映画、演劇、文学、音楽、スポーツに関するエッセイ集です。戦前の可憐、純潔の象徴であった女優及川道子への思い入れ、美人女優リタ・ヘイワ―スの転落の人生、カースン・マッカラーズの小品「過客」の見事な紹介等、短いエッセイの中に現れる作者の人生観、女性観の鋭さに圧倒されます。読みたい本も増えました。2021/10/14
siomin
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虫明は,いちばんの美文家だと思っています。そのエッセイが本書ですが,古い映画や小説の評論が中心で,私からとっては少々歯が立たない内容でした。しかし,昭和50年くらいのスポニチに,これだけ骨太の映画評論が載るとは,すごい時代だな。甘粕正彦は甘粕事件後にパリに渡り,当地で競馬三昧。当然負けが込み借金まみれ。その屈折を抱えつつ満州に渡ったという話はなかなかすごい。競馬で負けが込まなかったら,もしかしたら日本の歴史は変わっていたかもしれない。2023/01/27