内容説明
大藪賞&推協賞W受賞! 新鋭が放つ骨太ミステリ
昭和29年の大阪で起きた連続猟奇殺人事件。中卒叩き上げの若き刑事・新城と帝大卒の警察官僚・守屋は戦後日本の巨大な闇に迫る。
※この電子書籍は2020年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
40
昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭に麻袋を被せられた刺殺体として見つかり、中卒の若手・新城が帝大卒のエリート守屋と組む警察小説。全てが正反対で衝突を繰り返しながら、戦後大阪に広がる巨大な闇に迫ってゆく二人。その背景に満蒙開拓団の苛烈な労働や、南下してきたソ連軍侵攻に際しての悲惨な状況、そして満州にでのアヘン製造で巨万の富を得てきた人々という構図があって、今回の事件に関わる人物たちの関係性が浮き彫りになってゆく部分は上手かったと思いますし、当時の時代性や警察組織の雰囲気も感じられてなかなか良かったです。2023/07/27
森オサム
30
著者初読み。日本推理作家協会賞、大藪春彦賞W受賞作。しかも直木賞候補作と言う事で、読む前の期待値は上がりまくってました。だからかどうかは分かりませんが、個人的にはいまいち面白く無かったです。コツコツと捜査を進めて行く警察小説では有るのですが、その過程は分かり辛く、主人公のバディにも魅力を感じず、結末にもカタルシスが無く、とは言い過ぎかも知れませんが…。結果的には二つの事件で有り二人の犯人なのですが、読者にはほぼその構造は明かされています(犯人の一人の手記?で)。何だかとっ散らかった作品と言う印象でしたね。2024/01/19
駄目男
18
昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭に麻袋を被せられた刺殺体となって見つかった。大阪市警視庁が騒然とするなか、中卒の若手・新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑で、国警から出向してきた帝大卒のエリート・守屋と組むことに。全てが正反対のふたりは衝突を繰り返しながら、戦後大阪に広がる巨大な闇に迫る。昭和29年といえば、まだ国内整備も完全ではなく犯罪も多かったろう。人権意識も薄く警察による暴力も頻繁に起きていたのだはなかろうか。まったく違う個性の二人が、ただ一つ犯人を追う執念だけは一致していた。2023/12/03
陽ちゃん
12
昭和29年、まだ大阪市警視庁があった時代に京橋付近で死体が発見された事件を発端に、第二、第三の事件が起き、一方で、市警内では上層部が国警との合併に向けて対立し合う中で指揮系統に混乱が生じていて…。中卒で市警に入り、漸く憧れの刑事になった新城と、東京帝大卒のエリートながら色々曰く付きの守屋のコンビが、ぶつかりながら捜査を進めるうちに、お互いを認め、協力し合うようになる流れは予想できましたが、中々いいコンビだったので、何年後かに再度コンビで活躍して欲しいかも。舞台が大阪なので珍しく地名が身近でした。2023/10/23
tomo
12
☆☆☆☆ 4.4 戦後まもなく合法だった覚醒剤(ヒロポン)、売春(赤線)と現代とはまるで違う時代といっても、せいぜい昭和20年代。作品は意外な犯人にまるで調子の合わない相方と読ませると思うのですが、戦時中の話が辛すぎる。2023/08/13