内容説明
コックリさんからQアノンまで! 宗教研究者とたどる、人間の“妄想力”をめぐる旅路。「亜宗教」とは、「近現代に生まれた非科学的で宗教めいた信念や言説」を指す造語。本書では、宗教研究者が「オカルト・スピリチュアル・疑似科学・陰謀論」といった亜宗教を、宗教学の知見から分析する。扱うのは、妖精写真、コックリさん、動物磁気、千里眼、念写、モンキー裁判、UFO、ニューエイジ、エスパー、臨死体験、シンクロニシティ、爬虫類人、Qアノン、反ワクチンなどなど……。信仰と科学の狭間で蠢く人間の“妄想力”の歴史をたどり、「人間にとって信仰とはなにか」を暴き出す。
目次
序章 宗教と科学の混ざりもの
第1部 西洋と日本の心霊ブーム 19→20世紀
第1章 一九~二〇世紀初頭の心霊主義
第2章 コックリさんと井上円了の『妖怪学講義』
第3章 動物磁気、骨相学、催眠術――一九世紀の(疑似)科学
第4章 明治末の千里眼ブームと新宗教の動向
補章 伝統宗教のマジカル思考
第2部 アメリカ発の覚醒ブーム 20→21世紀
第5章 ファンダメンタリストとモンキー裁判
第6章 UFOの時代――空飛ぶ円盤から異星人による誘拐まで
第7章 ニューエイジ、カスタネダ、オウム真理教事件
第8章 科学か疑似科学か?――ESP、共時性から臨死体験まで
終章 陰謀論か無神論か? 宗教と亜宗教のゆくえ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
76
近代のオカルトを宗教に似て非なるもの「亜宗教」と名付け、その歴史を追った一冊。千里眼から進化論まで基本通俗オカルトの通史となっているので基本は押さえられてわかりやすいものの、この分野に関心があって何冊か読んでいるなら新しい発見は無いかな。逆に言えば初心者はこれ一冊読んでおけば基本的な所は押さえられるかと。良く言えば広範に、悪く言えばまとまりが無いように感じられた。あと最後の部分、最近話題に上る事が多い理系文系からのポストモダンやニューアカとオカルトは面白いな。最近の人文学者の悪目立ちにも通底してそうだし。2023/06/22
へくとぱすかる
62
サブタイトルにあるオカルト・疑似科学などを、「亜宗教」という概念でまとめた点が目からウロコ。この用語を使うことで、「宗教」とシームレスに探究する視点が生まれ、掘り下げを進められるからである。19世紀以来の心霊研究や論争が牧歌的と思えるくらい、現在にいたるまでの事象は深刻だと思えるし、政治・文化、ひいては世界中の人生を左右している。「なぜ信じるのか?」とオビにあるように、宗教・亜宗教を問わず、そこには懐疑的態度、疑似科学に汚染されていない、本来の科学的態度をいつも保持している必要があるのではないかと感じた。2023/05/23
がらくたどん
57
伊与原さんの『コンタミ』を読んで興味をもった本。めっちゃ久々にオラオラな帯の付いた新書を買ったのでドキドキ。19世紀の科学の勃興に伴う既存宗教の退潮で精神的な縋り処を見失った人々の空洞を埋めるかのように出没した科学っぽいスタイルを疑似的に纏った非科学的な信念・言説(著者曰く亜宗教)を時系列的に解説する。新書にたまに混在する「俺の話を聞け」的な姿勢はなく随所に科学・宗教・亜宗教群の年表が挿入されるので知識の整理にもってこい。この世は空手で立つには辛すぎる。せめて何か支えがほしい。人生の安全な杖探しの一助に♪2025/01/20
rosetta
33
院からは東大だけど大学の先輩。自分が卒業した後に工学部から転部してきて文学部では自分の方が先輩にあたる(笑)。もし学部で一緒だったら凄く話があっただろうな。帯にあるそれぞれのテーマを見ればだいたい内容はわかると思う。イマイチ文章が一度読んだだけでは分かりにくく自分との相性はあまり良くなかった。フロイトやユングも擬似科学扱いされていて我が意を得たりの気分。人文・社会系のポストモダンの言説が自然科学の言葉を使って読者を煙に巻こうとしていたことをはっきり指摘してくれていてそこんとこも好き。この人少し追ってみよう2025/01/06
道楽モン
24
科学的に証明出来ない「神」という概念を受け入れた上で、それを前提とした世界観や概念を構築することで人々は、宗教を生きる拠り所とする。すべての人間は宗派や教団の有無に依らず、共同体に内在する文化や道徳などの規範に従わざるを得ないのだから、宗教から逃れる事は不可能だ。カルト教団やオカルトは、世界観が刹那的で短絡的かつ稚拙であることから胡散臭いものと見なされるが、「神」を受け入れる大前提からすれば、根は同じだろう。時代も文化も超越して同様の世界観を共有する神秘主義も、物語を欲する人類のDNAが産んだ救済装置だ。2023/07/13